
1ヶ月ぶりの浅草ロック座で「MUSE(ミューズ)1st season」を拝見しました。
「1景」早乙女らぶ(南まゆ、沙羅、ダンサー4名)
大きい赤いリボンとブルーのドレスは岡本太郎の『傷ましき腕』から。不気味可愛い極彩色の衣装のダンサーたちは感情を失ったかのよう。目のようなものの付いたドレス。『太陽の塔』と赤と青の衣装から万博とミャクミャクを連想していまいますが、あくまで岡本太郎の世界観。海の波の音からのダンスは生命の誕生を思わせますが、やはり螺旋に切り裂かれた右手が痛々しい。早乙女らぶさんが演じる人間を恐れる無垢な新生命体の迫力。土から湧いたようなプリミティブな踊りが好きで、日本舞踊が嫌いだったという岡本氏、浅草ロック座は如何に。
「2景」泉田栞(宮野ゆかな、天瀬めるか、白橋りほ)
浅草ロック座初出演だそう。徐々に拡大していくスカラー波から懐かしの「パナウェーブ研究所(PWK)」。白ではなくシルバーのスペーシーな衣装にハイエイトチョコグラス。ラメスリップドレス姿の宮野ゆかなさんがやたらコミカルで楽しい。金、金、金と連呼する『Peanut Butter Jelly』の絶妙に不調和な歌詞など完全にシニカルなコメディとして昇華しているのが素晴らしい。盆を囲むように射出されるレーザー照明が格好良い。
「3景」加藤妃乃
19世紀のベルギーの画家アントワーヌ・ヴィールツの『麗しのロジーヌ』、回転する額縁、序盤から一糸纏わぬストロングスタイル。映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』の主題歌『THANATOS-IF I CAN’T BE YOURS-』も螺旋のイメージか。枯れた髪飾りを付けた骸骨はロジーヌそのもので、レイ・ブラッドベリの短編小説『骨』を思い出させる。ただ、『骨』の主人公ハリスのように自分の中の骨を恐れるのではなく、親愛を持って受け入れる深い眼差し。生は死の始まり。
「4景」白橋りほ(樋口みつは、泉田栞)
白橋りほさんの蛙、樋口みつはさんの兎、泉田栞さんの猿で『鳥獣戯画』、着ぐるみ風衣装も色を廃しており再現度が高い。追いかけっこ、弓当て、相撲など戯画を4コマ風に表現。後半は緑の長襦袢、レキシの『ギガアイシテル』が最高で、帯を絵巻物に例える描写が素敵。
「5景」沙羅(ダンサー4名)
千住博氏の『ウォーターフォール』、ロビーに飾られた絵を見ないと絶対分かりませんでしたが、分かれば納得。最初の5人のダンスは『ウォーターフォール』そのままで、真正面から見た方が綺麗かも。もはや水の集合という生物でもないものを表現する沙羅さんがやばい。花道を移動する盆上でのほぼ目線だけの描写が素晴らしくて感動する。盆上での足や着物の使い方、静止しているのに動きを感じさせる踊りも素晴らしい。重力に反して昇天する滝を見る。
「6景」天瀬めるか(南まゆ、樋口みつは、白橋りほ、加藤妃乃、泉田栞)
ジョンとヨーコ。南まゆさんの丸メガネの丸のサイズが大き過ぎるのが気になります。白いブロック塀に絵が描かれる演出も楽しい。痩身のアイドル風であどけなさが残りますが、ラブ&ピース、人々に勇気を。
「7景」宮野ゆかな(沙羅、加藤妃乃)
ギリシャ神話の「パリスの審判」、緑の沙羅さんが神々の女王ヘラー、赤の加藤妃乃さんが知恵の女神アテナ、黄の宮野ゆかな愛と美の女神アフロディテと想像。黄金の林檎はアフロディテの手に。転がりながら後退するダンスがユニーク。古代ギリシャ風のゴールドのサンダルがとても可愛い。
「8景」樋口みつは(早乙女らぶ)
全く知りませんでしたが『ICO(イコ)』というプレイスステーションのゲームから。樋口みつはさんと早乙女らぶさんの2人の調和がとても良い。四方を布に囲まれた檻からの脱出、ブルーの照明が効果的に使われ『君が光に変えて行く』の歌詞が沁みる。花道の途中に立った状態での暗転も新鮮で、ほのかな希望を感じさせる。
「9景」南まゆ(宮野ゆかな、早乙女らぶ、天瀬めるか、ダンサー4名)
大河ドラマ、歌舞伎『きらら浮世伝』、4月22日から開催される東京国立博物館の特別展、そして浅草ロック座でも蔦屋重三郎。写楽の『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』、生まれ育った吉原と浅草で親和性高過ぎ、遊女や花魁との関係は深く温かい。豪華な花魁ドレスがとても可愛い。郭繋縞の法被にティアドロップ型サングラスのコミカルな職人風、南まゆさんはシルバーのスリップドレスからブルーの帯付きドレスへ。南まゆさんは終始困り顔でしたが、体の流線が美しい。しかしやっぱり笑顔が見たい。8景からフィナーレまで早乙女らぶさんの奮闘ぶりも見事です。
「フィナーレ」
白い花嫁衣装風の13人のミューズによる華やかな群舞。2nd, 3rd も、もしかすると拝見するやもしれませんが、未知の知識や音楽も吸収できる浅草ロック座はとても良い。
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