東劇のシネマ歌舞伎『人情噺 文七元結』を拝見しました。落語でも大好きな演目ですので、どう違うかなど気になります。そして恥ずかしながら中村勘三郎さんの演技を見るのは初めてです。2007年10月に新橋演舞場にて上演された落語が原作の世話物。山田洋次監督は物語の補綴はしていますが、主に今回の映画のためのカメラワークなどを監督されたようです。
配役
左官長兵衛:十八世中村勘三郎
女房お兼:中村扇雀
手代文七:中村勘太郎(現中村勘九郎)
お久:中村芝のぶ
鳶頭伊兵衛:片岡亀蔵
和泉屋清兵衛:坂東彌十郎
角海老女房お駒:七世中村芝翫
「本所割下水左官長兵衛内の場」
始まりはかなり落語に忠実。長兵衛とお兼の痴話喧嘩が面白い。このお話の中村扇雀さん最高!あの印象的な大きな目を最大限有効活用されていました。角海老に行くために着ていく着物がなく、お兼からひったくるシーンが面白い。
「吉原角海老内証の場」
角海老女房お駒役の七世中村芝翫さん、存在感が半端ないです。少し冷めたような抑えた演技も素晴らしい。肌色の中村芝のぶさん初めて拝見しました。女性としか思えないお声がとても綺麗です。この後の変化が楽しみ過ぎました。中村勘太郎さんのお兼から奪った着物が女性用とばれないようにする袂や裾捌きが最高。足の痺れっぷりも良かったです。
「本所大川端の場」
ツケの50両をスリ(頭突きというらしい)に取られて自殺しようとした手代文七を長兵衛が止める件。息子が出ているからか、落語よりじっくり見せましたが、ここはやや諄く感じました。大切な50両なので、迷いも当然かとは思いますが。落語だと長兵衛の50両は綺麗な財布に入れられるのですが、汚いボロ手ぬぐいに包まれます。ここでの一笑いのためでしょうか。
「元の長兵衛内の場」
落語なら「べっ甲問屋和泉屋の場」が挿入され、50両はスられたのでなく忘れただけとか、お久が角海老にいることが判明するのですが、すっ飛ばして最終幕へ。この場は一番の盛り上がり。笑って泣けます。半纏しか着ていないため屏風に隠れて顔半分だけ見せる扇雀さんの可愛さ!キーホルダーにしたいです。白塗りして桃色の綺麗な着物を着た綺麗なお久が登場し、トントン拍子に文七との結婚が決まる間の長兵衛のすっとぼけぶりや表情も最高でした。落語よりずっと温かみのあるキャラクターに感じられるのは中村勘三郎さんの性質によるものでしょうか。長兵衛の人間味の掘り下げも素晴らしかった。あっという間に90分、とても楽しい演目でした。
2020年「二月大歌舞伎」で中村菊五郎さんの長兵衛で再演されるので、その違いを見るのもまた楽しみです!
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