令和元年12月文楽鑑賞教室『伊達娘恋緋鹿子』『平家女護島』国立劇場


国立劇場 小劇場で開催された令和元年12月文楽鑑賞教室『伊達娘恋緋鹿子』『平家女護島』を拝見しました。

配役表

まずは『伊達娘恋緋鹿子』の「火の見櫓の段」から。15分もありませんが、登場する人形も多く、何よりお七が梯子を登るシーンが有名過ぎる鑑賞教室にぴったりの華やかでわかりやすい一幕。最後は6人によるドタバタで幕。何度見ても梯子を登るシーンはドキドキします。この物語のお七、『神霊矢口渡』のお舟は歌舞伎役者の女方なら誰もがやりたい役だと言いますが、文楽でも同じなのかもしれません。派手なシーンなので誰がやってもある程度様になるという理由もあるでしょうか。

その後は文楽の太夫、三味線、人形使いの方による説明。面白かったのは三味線は主に「おもて撥」「つき撥」「おさえ撥」「たたき撥」の4つの演奏法を使い喜怒哀楽を表しているというお話。その後『仮名手本忠臣蔵』の三段目「裏門の段」の勘平とおかるの絡みを披露していただきました。そして通常通り語った後は2人をお爺ちゃんとお婆ちゃんという設定で同じシーンを再披露。表現の仕方が全く異なりこれも面白い。ある程度型が決まっているのでしょうね。

『平家女護島』の「鬼界が島の段」、豊竹呂勢太夫さんが病気療養のため語りは竹本千歳太夫さんが代行。「たとひいかなる鬼なりと、この哀れなどか知らざらん」などという島の寂しさを表す表現が素敵。早や3年この島で過ごす俊寛の哀れさが際立ちます。それにしても俊寛の人形は完成度が素晴らしい。手足も「枯木のいざり松」ぶりがよく出ています。蔦を手にかけ崖を降りてくる平判官康頼の出も凄い。丹波少将成経と恋仲の蜑(海女)千鳥は女性では珍しい足付き。赦免船に置いていかれる時の慟哭が凄まじい。ちらっと千歳太夫さんを見てみれば血管が切れそうなお顔で体を大きく前後に振りながら、「岩に頭を打ち当て打ち砕き今死ぬる」という台詞さながら本当に命を削って語っておられました。

俊寛と瀬尾(せのお)の斬り合いも、2人もよろよろながら迫力ありました。竹杖で加勢しようとして俊寛に止められた千鳥が、さりげなく瀬尾に砂で目潰し攻撃しているのが可愛いです。最後は女房のあづまやが殺されたと知らされた俊寛の怒りで首を切られて絶命。この辺りは文楽ならではの表現です。その後は俊寛1人を置いて思ったよりあっさり斜面船出航、これにより後が際立ちます。1本松が生えた岩山に登り、遠見の船を見送る俊寛。おそらく都を感じられるものの見納めでしょう。最後は岩山が90度回転し、俊寛の正面姿で幕。歌舞伎も同じ趣向ですね。昨年歌舞伎座で中村吉右衛門さんの『俊寛』を拝見しました。素晴らしい熱演にもかかわらず涙は出ませんでしたが、文楽は泣かせます。ねっとりとした語りと間をたっぷりとった人形の表現が堪りません!1時間通しで壮絶な場面を演じられるのは大変でしょうが、人間国宝の吉田和生さんの俊寛、6人を語り分ける千歳太夫さんの熱演も最高でした!ありがとうございます!!

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