十二月大歌舞伎 夜の部『神霊矢口渡』『本朝白雪姫譚話』歌舞伎座

「十二月大歌舞伎 夜の部」を拝見してきました。『神霊矢口渡』は、今夏の国立劇場「歌舞伎鑑賞教室」の中村壱太郎君のお舟の人形振り、昨夏の「稚魚の会」の中村芝のぶさんの素晴らしいお舟を拝見して満足しているし、白雪姫がどうにも良い感じがせず、幕間で行こうかなと思っていたのですが、たまたま金八席(3階B席)のまぁまぁ良い場所が空いていたので取得。

一本目は『神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)』「頓兵衛住家の場」です。

配役
渡し守頓兵衛:尾上松緑(音羽屋)
娘お舟:中村梅枝(萬屋)
傾城うてな:中村児太郎(成駒屋)
下男六蔵:中村萬太郎(萬屋)
新田義峯:坂東亀蔵(音羽屋)

何回か拝見している演目、前半は良かったですが、中盤寝かけてしまいました。。。新田義峯に一目惚れしてしまった梅枝君のお舟は照れ方がとても可愛いく魅力たっぷり。義峯演じる亀蔵さんも風格があります。以外と大事な役所だと今回思ったのが下男六蔵、おちゃっぴいな感じの萬太郎君がおちゃっぴいを演じても面白さは半減。お舟との前半の絡みも体が自然に動いていない感じ、最後のお舟との揉み合いも効いてこないですね。ちなみに「おちゃっぴい」の語源は遊郭の「お茶挽き」からで「働いても報酬がなく割のあわないこと」の意もあるようです。

続いて怖いもの見たさもあった新作歌舞伎『本朝白雪姫譚話(ほんちょうしらゆきひめものがたり)』は予想的中。

配役
白雪姫:坂東玉三郎(大和屋)
鏡の精:中村梅枝(萬屋)
野分の前:中村児太郎(成駒屋)
輝陽の皇子:中村歌之助(成駒屋)
浦風の局:中村歌女之丞(成駒屋)
家臣郷村新吾:中村獅童(萬屋)

ぬるくて浅い、心地よくない足湯のような演目でした。。。白雪姫誕生のプロローグから一気に16年。「十六年は一昔」とは『一谷嫩軍記』の熊谷直実の名言ですが、取り敢えず浦風の局と横雲の局が何も変わらず生きていてくれて安心。内容としてはグリム童話の原作に近い(かなり忠実)ブラックなもの。白雪の肺や肝臓も食べちゃいます。野分の前(ちなみに野分は台風の意味)に白雪の抹殺を頼まれた郷村新吾ですが、殺そうとするとピッカーンとなりどうしてもできない。「その美しさ新吾には消せはしまい!」。野分に真実がばれた後、出てこなかったが処刑されちゃったのかな。。。原作と大きく違うのは小人(ドワーフ)が子供であること。これにより学芸会感が凄い!何で大人でやらなかったのでしょうか。人員不足?白雪さん?こういう可愛さ求めてません。野分直々に狼の牙の毒を仕込んだ櫛、黒蜥蜴の毒を仕込んだリンゴにより白雪姫を殺すがあえなく失敗。「みんな元気だ白雪さんもーそれで世の中御の字だー」。原作でも白雪姫の蘇生はあっけないものですが、本演目でも同様。白雪姫の棺が鏡である意味はなんなんでしょう。最後は玉三郎さんのお気に入りなのか、中村歌之助君演じる王子と目出度く婚礼。「高砂」の替え歌も歌っちゃいます。天照大神の名前も軽く使い過ぎでは。最後は獅童さんの口付けで復活でも良かったか。そしてどうせなら、焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされる児太郎君も見たかったです!

中途半端な喜劇で笑うに笑えないシーンも多々。いったい何がやりたかったのかと考えれば鏡の精のこの一言「白雪の美しさは宇宙の心理!」、そして共感できる台詞が1つ「悪い夢でも見ているようだー!」。とはいえ16歳にしては貫禄有り過ぎ落ち着き過ぎの玉三郎さんも梅枝君、児太郎君もお綺麗でしたね。

そして驚いたのは「大向う」さんの掛け声が夜の部通して一切なかったこと。ついに見捨てられたか。。。どっかの高校生集団が社会見学か何かで見に来ていらっしゃいましたが、これを見てどう思ったのか気になるところ。来週の昼の部(Aプロ)に期待です!

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