今回初めて知った作品でしたが《1934年(昭和10年)から翌年にかけ、朝日新聞に連載された三上於菟吉の時代小説で、何度も映画化、舞台化された名作》とのこと。昔の作品なので物語はとてもシンプルな仇討物。
配役
中村菊之丞:坂東玉三郎
中村菊之丞、土部三斎、孤軒老師、脇田一松斎、盗賊闇太郎:市川中車(五役)
秋空星三郎:中村七之助
鈴虫:坂東やゑ六
ストーリーざっくり
主役は幼い頃住んでいた長崎で奉行の謀略により父が処刑されてしまった過去を持つ女方役者の中村雪之丞。父の仇を討つために独創天心流の脇田一松斎に師事し剣の腕を磨きつつ、歌舞伎役者としても名を馳せ、首謀者である土部三斎に迫っていきます。最後は盗賊の闇太郎とも協力し、一味の仇討ちに成功するのでした。
最初は劇中劇の伽羅先代萩で始まり、数分ではありますが、第一部で政岡を演じた七之助が八汐、玉三郎が政岡を演じているのが面白い。続いて仁木弾正の引っ込みに場面が飛びますが、映像と組み合わせてそのまま舞台裏の場につながっていくのは楽しい趣向でした。
舞台にはセットがほとんど配置されず、映像が多様されます。歌舞伎座の舞台って奥行きがあって何もないと本当だだっ広い。3階5列目ほぼ中央から見ていたのですが、一番大きな画面の上部が見えない。。。映像がここまで多様される演目を見るのは初めてでしたが、なかにはクオリティが低いものもありました(特にリアルな人物の映像ではないもの、ワイドショー的な町の人のインタビュー映像とか、土部三斎屋敷の宴会の映像とか)。玉三郎の過去の舞台映像も流れるのですが、鷺娘に炎のCGとか貧素な印象。実際の人物と映像の人物との会話も不自然。三斎の娘の浪路の映像必要か?映像の多くがチープな印象で、それが実際の舞台にも影響しているようで、かなり残念。私は生の役者が見たいのです。ただ中車の顔芸は流石!
他気になったこと色々。演者が4人と少ないのに加え、セリ、画面の出入りが多くテンポが悪い。物語自体の内容が大幅に単純化されているため人物描写が希薄。菊之丞の男の部分も全く見えなかった(もともとの設定なのか?)。本来はしっかりとした物語なのでは?最後は大勢出演の楽しい舞踏「元禄花見踊」で幕(中村芝のぶさん、お綺麗でした)なのですが、この2時間はなんだったんだ!と数秒気が抜けました。歌舞伎初観劇の方がこの舞台を見たら一体どう思われるのでしょうか??
七之助さんは立役でも安定、ナウシカでどんなクシャナを演じていただけるか本当楽しみ。大好きな玉三郎さんもとても変わらずお綺麗で、美しい舞踏も堪能できました。たくさん「?」が出てくる第三部なのでしたが、全部含めて楽しい2時間でした。新しい試みなので次に繋がると良いですね!
コメント