令和2年11月歌舞伎公演 第一部『平家女護島 俊寛』国立劇場

令和2年11月歌舞伎公演 第一部『平家女護島 俊寛』
11月の歌舞伎始めは国立劇場、近松門左衛門作『平家女護島 俊寛』から。あまり上演されない序幕「六波羅清盛館の場」も上演ということで非常に楽しみ、本日初日です!

配役
平相国入道清盛:中村吉右衛門(播磨屋)
俊寛妻東屋:尾上菊之助(音羽屋)
有王丸:中村歌昇(播磨屋)
菊王丸:中村種之助(播磨屋)
越中次郎兵衛盛次:嵐橘三郎(伊丹屋)
能登守教経:中村歌六(播磨屋)

初めて拝見しましたが、配役も最高でめっちゃ良かった!素朴なお爺ちゃん役のイメージが強い歌六さんが、男前なお役。凛々しく気品のあるお顔がお役にぴったり。吉右衛門さんの清盛も非常に短い登場シーンですが、流石のインパクト。目の周りの隈取りも滅茶格好良い!義太夫の「大口くわっと見給いて、とろとろ見惚れおはします」に合わせた、あの下品な表情、退場時の呵呵大笑は堪りませんね。素晴らしい!俊寛の妻、東屋役の菊之助さんは相変わらずの安定感で、卒の無い印象。流石に自害にシーンは痛かった。気になったのは東屋を説得しようとした3人の中臈の動き、義太夫の語りに動きに合わせて動いており、かなり不自然。正しい関係性わかりませんが、急に登場した元気いっぱい有王丸、ライバル菊王丸も素敵。初日のためか、ちょっとばたついた感ありましたが、兄弟一緒なら大丈夫。というかこれは単なる兄弟喧嘩じゃないか。あぁ能登鯖食べたい。最後は義太夫の「助くるも道、殺すも道、別れてこそは」、3人で決まって幕。

30分の休憩を挟み、二幕目「鬼界ヶ島の場」、最初と最後に鼓が入るのは能の名残でしょうか。興味深いです。

配役
俊寛僧都:中村吉右衛門(播磨屋)
海女千鳥:中村雀右衛門(京屋)
丹左衛門尉基康:尾上菊之助(音羽屋)
平判官康頼:中村吉之丞(播磨屋)
丹波少将成経:中村錦之助(萬屋)
瀬尾太郎兼康:中村又五郎(播磨屋)

俊寛の岩陰からの出、やっぱり凄い!声を発した瞬間、鳥肌もの。俊寛がいる。どのお役でも変わら無い方もいらっしゃるが、吉右衛門さんは、ちゃんとその役になってる。歌舞伎で以外とそういう方は少ない気がしています。それだけに先ほどの清盛との対比も際立ちます。

この演目の密かなキーマンが控えめで目立たない「平判官康頼」、演目では成経と島に熊野三所を勧請し、熊野権現を祈りますが、史実では望郷の歌を記した千本の卒塔婆を海に流し、その内の一本が厳島に流れ着き、これを見た清盛が赦免を行ったという。また、除幕に登場した俊寛の弟子「有王」は、残された俊寛のいる鬼界ヶ島を訪れ、俊寛の娘の手紙を渡し、それを読み俊寛は死を決意して断食自害したという。事実だとしたら康頼凄いぞ!

俊寛に挨拶するために登場する千鳥役の雀右衛門さん、恥ずかしくて逃げてしまうのがおぼこで可愛らしい。成経と千鳥の祝宴の場面は今後の展開を知っていながらも少し楽しくなりますが、最後の俊寛の笑い泣きが素晴らしく切ない。この時代に、流罪になったとはいえ官位のある男と結ばれる海女千鳥の心はいかばかりか。それを大らかに歓迎する俊寛の優しく先進的な性質がよく表れています。その後の千鳥が1人だけ置いておかれて喚く場面は、動きがややもったり、不覚にも眠くなりました。。。無慈悲な瀬尾(妹尾)兼康は、本当は良い武将だったようですが、この演目では可哀想な役回り。清盛の駄分身のような嫌な奴、弱いし。枯木のいざり松な俊寛に殺されても仕方無し。この争いは実は裏で基康が仕組んだと思えます。首に刀を刺し止めを刺すと同時に、千鳥が飛び立つのは、船に乗る人が俊寛から千鳥に代わった事と「波に千鳥=夫婦円満」を願う意味も感じられます。最後、赦免船が出発し、「お〜い、お〜い」と追いかけるも波に阻まれ、蔓につかまりながら岩山に登ります。頂上の1本の松の枝に掴まるも、無情にも枝が折れ倒れこむ、その時、船も見失い、俊寛の死の決意も固まったかに思えます。吉右衛門さんは「無」と表現する最後の表情。私にはまだそれを上手く受け止めることができない。短い中に本当盛り沢山で、俊寛の心の活発な動きに自分の愚鈍な心が追っつかないんだな。しかしながら、中村吉右衛門さん始め、播磨屋の芸の素晴らしさを堪能できた一幕でした。

吉右衛門さんの俊寛、雀右衛門さんの千鳥など今回と似た配役だった2018年9月の「秀山祭九月大歌舞伎」で拝見した時より感動がありました。徐々にではありますが、理解できている気がいたします。誰でもよいので、りんにょぎゃって下さい。

コメント

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