国立劇場、令和2年11月歌舞伎公演、第二部『彦山権現誓助剣 毛谷村(ひこさんごんげんちかいのすけだち けやむら)』を拝見しました。2017年「秀山祭九月大歌舞伎」で松本幸四郎さん(当時染之助)六助で拝見して以来です。
配役
毛谷村六助:片岡仁左衛門(松島屋)
一味斎娘お園:片岡孝太郎(松島屋)
杣人斧右衛門:坂東彦三郎(音羽屋)
一味斎孫弥三松:小川大晴(初お目見得、梅枝長男)
家人佐五平:片岡松之助(松島屋)
微塵弾正実ハ京極内匠:坂東彌十郎(大和屋)
一味斎後室お幸:中村東蔵(加賀屋)
第一場「豊前国彦山杉坂墓所の場」から、この場があると、随分話がわかりやすくなります。仁左衛門さんの六助、こういったお金持ちではなく人が良いお役は新鮮です。思いやりのある六助ですが、時折見せるキリリとした表情が素敵過ぎる。今後の展開を知っていると彌十郎さんの微塵弾正は嘘臭くてイラっとしますね。今回デビューの大晴君も可愛らしくて元気いっぱい、そして肌のハリに驚愕!磁器のように美しく触れたくなります。目の離れた感じとか梅枝君に似てる。続いてメインの第二場「毛谷村六助住家の場」、六助と微塵弾正の試合から。負けてあげた上に扇で額を割られてもお茶目で笑顔の六助です。仁左衛門さんも弥三松を抱っこしたり、あのお年でかなり重労働だと想像されるのですが、それを感じさせない日頃の鍛錬は凄い。
東蔵お幸はそれほど目立たないものの、六助との金の投げ合いが楽しい。さらに孝太郎お園の二重人格っぷりも面白い。敵と思ったら夫でしたので当然でしょうか。六助が太鼓の使い方も良い。火吹竹と尺八を間違えてオホホホホ、唖然とする六助の表情に爆笑。息子ですけど。。。親子で夫婦のお役を演じるなんて、歌舞伎ならではの面白さなのでは。弥三松を落下させたり、重そうな臼を軽々と持ち上げたり、のろけたり、忍びの源八と立ち回りながらの台詞など大忙し。こういう強く、せわしない勝気な女性のお役は孝太郎さんにぴったり。
その後の杣人斧右衛門の件は、化粧や踊りなども面白いのに、状況は笑うに笑えない。当時(江戸時代)の人はどう感じていたのでしょう。京極内匠(きょうごくたくみ)の悪巧みに気付いてからの六助の怒りの表情、「深い所へやりおったな。」からのリズムに乗せた台詞も素敵。金剛力で石をめり込ませちゃうのも当然です。幕切れは弥三松を抱っこした六助の見栄。小さい体をいっぱいに伸ばして、大きく見せようとしている大晴君が健気です。やはり子供には勝てませぬが、片岡仁左衛門さんの二枚目振り堪能させていただきました。いつか通しで拝見してみたい『彦山権現誓助剣』です。
30分の休憩を挟んで舞踏劇二題。上『文売り』から。
配役
文売り:中村梅枝(萬屋)
今年9月に文楽で拝見した『嫗山姥(こもちやまんば)』と傾城同士の喧嘩は似た内容と思ったら、そもそもが『嫗山姥』を舞踊化した作品だそう。30過ぎとは思えない風格、息子と同じ舞台なので気合も入っているのかも。今日は3階席でしたが、こういう雅な舞は1階席で拝見したいものです。
続いては下『三社祭』へ。拝見が変わると櫂と網をもった2人の漁師の兄弟がすっくと立っています。
配役
悪玉:中村鷹之資(天王寺屋)
善玉:片岡千之助(松島屋)
短い舞踏ですが、内容は蜜、衣装が代わり最後の「悪玉踊り」、扇を持って飛んだり跳ねたり、激しい踊りはとても楽しい。しかし踊りだけ見ると鷹之資君の巧さは圧倒的。安定感のあるどっしりした体型は下半身が重要な歌舞伎、日本舞踏に恵まれています。最後は2人とも汗だく、とっても良いお顔で見得を切り、幕切れ。勢いのある、とても良い舞台でした。
来月の国立劇場は第一部が『三人吉三巴白浪』、第二部が『天衣紛上野初花 河内山』、見に行くかどうか迷い中です。。。
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