鳳凰祭四月大歌舞伎 夜の部『与話情浮名横櫛』『連獅子』歌舞伎座

鳳凰祭四月大歌舞伎 夜の部『与話情浮名横櫛』『連獅子』
歌舞伎座で「鳳凰祭四月大歌舞伎 夜の部」を拝見しました。落語の「お富与三郎」で聞き齧ってはいますが、「木更津海岸見染の場」「赤間別荘の場」は拝見するのが初めてで楽しみ。

配役
与三郎:片岡仁左衛門(松嶋屋)
お富:坂東玉三郎(大和屋)
蝙蝠安:片岡市蔵(松嶋屋)
番頭藤八:片岡松之助(緑屋)
五行亭相生:市村橘太郎(橘屋)
海松杭の松五郎:中村吉之丞(播磨屋)
お針女お岸:中村歌女之丞(成駒屋)
赤間源左衛門:片岡亀蔵(松嶋屋)
鳶頭金五郎:坂東亀蔵(音羽屋)
和泉屋多左衛門:河原崎権十郎(山崎屋)

賑やかな木更津海岸から。与三郎の花道からの出が素敵、実年齢から考えると驚愕のイケメン放蕩若旦那振りが素晴らしい。移動の際に与三郎と金五郎が客席を通るのもコロナからの脱却を感じさせて嬉しくなりますが、3階席だと台詞がほぼ聞こえず。。。与三郎とお富が初めてすれ違う場面は、艶と色気の混沌にニヤニヤが止まらない。鼻の下がいくら長くっても、いい男はいい男なんですね。お富の獲物を狙う蛇のような「いい景色だねぇ」から、普通にこんな人いたら不自然な「羽織落し」も、じっくり自然なのが凄い。裏表に着用した羽織の柄は仁左衛門さんに因んだ柄なのでしょうか。3階からは見えない。「赤間別荘の場」は短いですが、次の「源氏店」への繋がりが良く分かる。前半はニヤニヤドキドキが止まらない。やっぱりお富が積極的なのね。襖の締め方とか玉三郎さんの緊張と緩和のバランスが見事。しかし簀巻きで海に放り込まれてよく助かった。

幕間挟んでお馴染みの「源氏店の場」、湯上りで色気が3階席まで匂う玉三郎さん、下心丸出しの番頭藤八と、それを玩具のようにしか扱わないお富の対比が楽しい。玉三郎さんの流れるような喋りは本当見ていて心地よし。待つ間に足元の石ころを転がる様子も絵になる与三郎。市蔵さんの蝙蝠安は、最初めっちゃ下品で汚らしい!と思ったのですが、後半じわじわ好きになってくる。権十郎さんの多左衛門も人情味が溢れていて良い。最後は目出度くハッピーエンド。仁左衛門さんは、体調のためかお声が出ていないよう。名台詞は弱い気がいたしましたが、動作とムードで十分嬉しくなりました。

二本目は同じく定番の『連獅子』です。

配役
狂言師右近後に親獅子の精:尾上松緑(音羽屋)
狂言師左近後に仔獅子の精:尾上左近(音羽屋)
僧蓮念:坂東亀蔵(音羽屋)
僧遍念:河原崎権十郎(山崎屋)

『与話情浮名横櫛』メインで存在すら忘れかけていたのですが、2020年「壽 初春大歌舞伎」の澤瀉屋の『連獅子』以来の素晴らしさ、いやそれ以上かも。昨年の『荒川十太夫』といい松緑さん、セリフは少ないほど良いのでは。。。最初の狂言師の舞からして、おっ!?と感じる出来で眠気もどこへやら。「いいぞ!いいぞ!」と、特に左近君を応援しながら拝見。振り付けが今まで拝見したものと違い、舞台を広く使っている感じ。長唄連中も、松緑さんを恐れているのか、気合十分な様子。それほど面白くない「宗論」部分も良い。お2人共、お声が良いので、凄く楽に見られるのが素晴らしく、間狂言の目的を存分に果たしている。最後の肩を組んで一緒に逃げていく演出も道理が通っており感心。眼目の獅子の精、無駄にロン毛をぶん回すことはせず、足踏みを合図にじっくり丁寧に、しかし勇猛さは失わずに腹を据えて演じているのが伝わります。最後の気振りは本当息がぴったりで美しく、長い!そして長く、美しい!!獅子に応えるお囃子も最高潮!!最後はお二人ともしっかり正面を見据えて簡素に終わるのも清々しく、松緑さんがちょこなんと上げる右足に男気を感じた。素晴らしい!!
鳳凰祭四月大歌舞伎 夜の部『与話情浮名横櫛』『連獅子』
そして昨夜訃報のニュースに驚き。市川左團次さん、ご冥福を心よりお祈りします。

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