五月大歌舞伎 第三部『八陣守護城』『春興鏡獅子』歌舞伎座

五月大歌舞伎 第三部『八陣守護城』『春興鏡獅子』歌舞伎座
公演再開した歌舞伎座、五月大歌舞伎 第三部を拝見しました。まずは『八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)湖水御座船』から。

配役
佐藤正清:中村歌六(播磨屋)
轟軍次:中村種之助(播磨屋)
鞠川玄蕃:中村吉之丞(播磨屋)
雛衣:中村雀右衛門(京屋)

中村吉右衛門さんの代役で佐藤正清役は中村歌六さん。昨年2月、片岡我當さんの正清で拝見していますが、あまり動けない方のための演目なのか。歌六さんは好きですが、吉右衛門さんの代役は厳しいですね。20分程度と短く、特に内容もないので、風格、存在感のみで魅せるお役、ちょっと寝かけてしまいました。。。

軽い睡眠を取ったところで、続いては、新歌舞伎十八番の内『春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)』です。

配役
小姓弥生/獅子の精:尾上菊之助(音羽屋)
用人関口十太夫:坂東彦三郎(音羽屋)
局吉野:中村米吉(播磨屋)
胡蝶の精:坂東亀三郎(音羽屋)
胡蝶の精:尾上丑之助(音羽屋)
老女飛鳥井:市村萬次郎(橘屋)
家老渋井五左衛門:坂東楽善(音羽屋)

血の繋がりを感じる配役、長年の歌舞伎ファンはこれだけでグッとくるのかも。坂東楽善さん、台詞が全然言えてなくてびっくり。亀三郎さんに手伝ってもらって立つのもお辛そう。それでも息子とお孫さんと共演できるのは凄い幸せなのかも。ほぼ菊之助さんの独り舞台、最初はもの凄く恥ずかしがっており、一旦は引っ込んでしまうものの、徐々に大胆に。「されば結ぶのそのかみや」から袂を使った所作、手踊り、赤い袱紗を使った所作、歌詞に合わせて道具が変わっていきます。「春は花見に 心うつりて山里の」からは扇で桜や水、風を、続いて扇2枚を使い、牡丹の「散り散り散り」と今にも散りそうな様子を華やかに大らかに表現、牡丹って散るよりは、落ちるというイメージですが、清涼山の牡丹は違うのかも。獅子頭を右手にはめると、獅子に右手を乗っ取られ、そのまま花道から引っ込み。何気に後見の動きも素早くて凄いぞ。山台が割れ、胡蝶の精が登場。8歳7歳のコンビは足元ふらふら、危うげな所作があり、蝶々の衣装は本当可愛い。眠っている獅子の精の肩をぽんぽんっと叩いて起こす仕草が良いな。二畳台は上手に、菊之助さん、流石に綺麗な気振りでしたね。素晴らしい。下手が蝶々がちらちら舞っているのは、サービスの1つか。例の如く長唄はあまり聞き取れず。。。これ素の状態でちゃんと聞き取れる方っているのでしょうか。疑問です。思えば最近の歌でも歌詞の全ては聞き取れませんからねぇ。

樵歌牧笛の声 人間万事様々に 世を渡り行くその中に 世の恋草を余所に見て 我は下萌えくむ春風に 花の東の宮仕え 忍ぶ便りも長廊下 忍ぶ便りも長廊下

されば結ぶのその神や あまの浮橋渡りそめ 女神男神の二柱 恋の根笹の伊勢海士小船 川崎音頭口々に 人の心の花の露 濡れにぞ濡れし鬢水の はたち鬘の堅意地も 道理御殿の勤めじゃと 人に謳われ結い立ての 櫛の歯にまでかけられし 平元結の高髷も 痒い所へ平打ちの 届かぬ人につながれて 人目の関のわかれ坂

春は花見に 心写りて山里の 谷の川音雨とのみ 聞こえて松の風 実に過って半日の客たりしも 今身の上に白雲の その折過ぎて花も散り 青葉茂るや夏木立 飛騨の踊りはおもしろや 早乙女がござれば 苗代水や五月雨 初の人にも馴染みはお茶よ ほんにさ 恨みかこつもな 実からしんぞ 気にあたろとはゆめゆめ知らなんだ 見るたびたびや聞くたびに 憎てらしほど可愛ゆさの 朧月夜や時鳥

時しも今は牡丹の花の 咲くや乱れて散るは散るは 散り来るは散り来るは 散り散り散り 散りかかるようで 面白うて寝られぬ 花見てあかそ 花には憂さをも打ち忘れ 咲き乱れたる 風に香のある花の波 来つれて連れて 顔は紅白薄紅さいて 見するは見するは 丁度廿日草 牡丹に戯れ獅子の曲

実に石橋の有り様は その面わずかにして 苔滑らかに谷深く 下は泥犂も白波の 音は嵐に響き合い 笙歌の花降り 簫笛琴箜篌(しょうちゃくきんくご) 夕日の雲に聞こゆべき 目前の奇特あらたなり

(胡蝶)世の中に 絶えて花香のなかりせば 我は何処に宿るべき 浮世も知らで草に寝て 花に遊びて明日には 露を情けの袖まくら 羽色に紛う物とては 我に所縁の深見草 花のおだまき 花のおだまきくり返し 風に柳の結ぶや糸の 吹かぬその間が命じゃものを 憎やつれなや そのあじさえも 忘れかねつつ飛び交ふ中を そつとそよいで隔つるは 科戸の神の妬みかや

よしや吉野の花より我は 羽風にこぼす白粉の その面影の愛しさに いとど思ひはます鏡 移る心や 紫の色に出でたか 恥ずかしながら 待つに甲斐なき松風の 花に薪を吹き添へて 雪を運ぶか朧げの われも迷ふや花の影 暫し 木影に休らひぬ(胡蝶了)

それ清涼山の石橋は人の渡せる橋ならず 法の功徳に自ずから出現なしたる橋なれば 暫く待たせ給えや 影向の時節も今幾程によも過ぎじ 牡丹の花に舞遊ぶ 葉影に遊ぶ蝶々の 風に翼かわして飛び巡る 獅子は勇んで くるくるくると 花に戯れ枝に臥し転び 実にも上なき獅子王の勢い 獅子の座にこそ直りけれ

今月の歌舞伎座はこれで終了ですが、月末の初めてのコクーン歌舞伎、楽しみにしております!!

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