国立劇場 小劇場で令和3年9月文楽公演 第一部『寿式三番叟』『双蝶々曲輪日記』を拝見しました。
配役
一幕目は『寿式三番叟』から。竹本錣太夫は朱の見台、やはり文楽でも特別な演目なのでしょう。そして一声目から気合い入ってます!これは面白くなりそうという期待が高まりました。「千秋万歳、悦びの舞なれば」からは鼓も入り賑やかに。翁を使うのは吉田和生さん、冷静な中にも寛容さを感じる表現が素晴らしい。見所の1つは三番叟2人による激しい舞、能『翁』では三番叟は1人で黒式尉の面を付けますが、色黒の又平の頭の方がその代わり。日本の基本はお米で、鶏のような滑稽な動きが楽しい。又平を遣う吉田玉助さんの安定感のある動きが素敵。又平が疲れて、こっそり休む(玉助さんの一息付いてる表情も面白い)のを検非違使の頭が励ましながら、舞納めます。能よりも大衆的な詞章も多くわかりやすい、特に意味のない内容ですが、やはり感動を感じる演目です。
二幕目は『双蝶々曲輪日記』、歌舞伎の『引窓』は数回見ていますが、文楽では初めてです。まずは「難波裏喧嘩の段」から。長五郎の立ち回りが楽しい段で、これがあると次の「八幡里引窓の段」が理解しやすくなります。前半の「欠け椀」は、野澤錦糸さんのしっとりとした三味線に、豊竹靖太夫さんの明朗快活な語りのバランスが良い。後半は7月に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された桐竹勘十郎さんの遣う南方十次兵衛が登場。やはり自然な動きは見事しか言いようがない。「人の出世は時知れず・・・」の語りだしが難しいという。文楽だと引窓はこうなるんだ〜と感心しながら興味深く拝見。長五郎の前髪を剃る件はとても丁寧です。とにかく長五郎、長五郎の母、十次兵衛、おはやの4人が優しくて、優しさの絡まり合いがややこしい。優しい人が沢山出てくる演目はほっとします。
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