国立演芸場で「6月特別企画公演 花形演芸会スペシャル～受賞者の会～」を拝見しました。流石に演者は面白い方ばかり、とてもクオリティの高い会でした。
前座：「寿限無」左ん坊
下げは「あんまり名前が長いから、コブが引っ込んじゃったい」
「男はつらいよ第二十作 寅次郎頑張れ！」玉川太福/曲師：玉川みね子
桂華紋さんが痛風を発症したことを暴露、昨日、国立演芸場で山田洋次監督と30分対談されたそうで、惰性で。時間が10分くらいしか無いので序の序。「しのぶです！」など演じる役者が名乗りを上げるのが楽しい。中村雅俊さんは田中邦衛っぽいなと思ってらご自分でも言ってた。興味深いが、自分が寅さんに全然興味が無いのが残念。。。
「阿弥陀池」桂華紋
よろよろしながら登場、なんとノーベル文学賞作家のカズオイシグロさんの親戚だそう、五親等のいとこ違いだそうです。上方らしい超高速落語、この時間で阿弥陀池をほぼ全部やり切れるのが凄い。心猫の勘違いが面白い。
「露出さん」柳家わさび
お噂には聞いていましたが、初めて拝聴、この髪型はいったい・・・そして、この場所でこの演目とは参りました。春風亭百栄さんの新作落語なのね。ご本人曰く、前が開ける、という意味で、おめでたい演目とのこと。露出狂生活20年以上、18時30分きっかりに現れるので時計変わり、お悩み相談に乗ったり、一番助けに行きやすい格好だったという理由で溺れている子供を助けるなど、既に街で愛される人物となってしまったことへの悲哀に爆笑。わさびさんのニンが露出狂と驚くほどぴったり、見たことないけど百栄師匠もぴったりであるに違いない。コートの前を開く前の描写の気持ち悪さが最高に面白い。最後はしっとりと。今後も磨きのかかると思われる「独特の造形」、楽しみにしています。下げは「露出狂は辞めるけど、この辺りでぶらぶらしているから」
「江戸荒物」笑福亭べ瓶
笑福亭鶴瓶師匠のお弟子さん、時代劇に出演した時にドリフのカトちゃんみたいな死に方をして「早よ死ね笑福亭！」と怒られたというマクラから、わさびさんから続く変なキャラに爆笑。関西では「もぐら」を「おごろもち」、「たわし」を「切りワラ」というらしい。江戸荒物屋を大阪で開業した男が頑張って江戸弁を使おうとする話、勘違いして連発する「どぅわ」という叫び声が楽しい。もしかして江戸を逆にした「どぅえ」って言ってんのかな。ノリの良い楽しい落語は良いですねぇ。
「水族館」古今亭志ん五
続いても穏やかながらとんでもない人物が登場する新作落語。水族館の鰯たちが表現した「SOS」は「さばいて おくれよ 刺身に」と解釈するのが凄い。下げは「あの鮫、今朝食べちゃったから」
「真景累ヶ淵 宗悦殺し」神田伯山
「令和3年度花形演芸大賞贈賞式/司会：柳亭左龍」
【大賞】桂小すみ
【金賞】神田伯山、瀧川鯉八、古今亭志ん五、笑福亭べ瓶
【銀賞】柳家わさび、柳家㐂三郎、桂華紋、玉川太福
日本芸術文化振興会理事長の河村潤子さんの挨拶から。元文部科学官僚なのね。硬い雰囲気なので、挨拶も硬いと思いきや、いきなり現行犯逮捕の小噺のぶっ込みからの「恐れ入谷の鬼子母神」に爆笑。流石です。そしてたまたま月番だったという濱田元子さんの高速総評、贈賞式へ。皆様けっこう真面目、目が泳いでるわさびさんが面白い。
「馬のす」柳亭左龍
昔は土日に演芸場に現れ、若手に千円を借りて馬券を買いに行っていた文蔵師匠は随分丸くなったらしい。初めて聞いた演目でした。下げは「馬が痛がるんだよ」
「のっぺらぼう」柳家㐂三郎
ダブルピースで登場、キャラが濃い。「芝浜」のあらすじを全部説明した後、「舞浜」という夢の国で働く男が、浜でネズミの被り物を拾う話からの「のっぺらぼう」、芝浜から続く下げ「よそう、また夢になるといけねぇ」が上手い。
「若さしか取り柄がないくせに」瀧川鯉八
尿管結石は出産と並び痛いランキングに入るというマクラから、奇妙な世界観の新作落語。孫とお婆ちゃんの会話劇と聞くとほっこりですが、その期待は裏切られます。話し上手なお婆ちゃんにありきたりな良い話ではなく悪い話を聞きたがる孫、悪い話といっても気持ち悪い話や格好悪い話を拾うする婆、最後は悪い話というより怖い話、下げは「いつも綺麗で小金持ちの陽子さん、今ずっとあんたの話しとったんじゃ」
「音曲」桂小すみ
舞台にエレクトーン？設置、「伊勢音頭」、歌舞伎でもお馴染みの超格好良い「大薩摩」、三味線巧い、「どうぞ叶えて」の三味線版とオペラ版、『レ・ミゼラブル』のエボニーヌのテーマ「オン・マイ・オウン」の英語版、ドイツ語版、日本語版の比較、都々逸「隅田川さえ
棹差しゃ届く なぜに届かぬ わが思い」、都々逸礼賛のテンション！、最後は自作のアラビアンマスクを付けてオリジナル曲「愛しのカレー」。知的！巧い！面白い！トリが音曲というのも良いですね。受賞おめでとうございます。素晴らしい。
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