歌舞伎座で鳳凰祭四月大歌舞伎 昼の部『新・陰陽師 滝夜叉姫』を拝見しました。夢枕獏さんの小説『陰陽師』シリーズ『陰陽師 瀧夜叉姫』が原作だそう。
配役
安倍晴明:中村隼人(萬屋)
源博雅:市川染五郎(高麗屋)
平将門/村上帝:坂東巳之助(大和屋)
滝夜叉姫/如月姫:中村壱太郎(成駒屋)
興世王:尾上右近(音羽屋)
桔梗の前:中村児太郎(成駒屋)
俵藤太:中村福之助(成駒屋)
大蛇丸:中村鷹之資(天王寺屋)
源八坊:中村青虎(澤瀉屋)
琴吹の内侍:市川寿猿(澤瀉屋)
式神密夜:市川笑三郎(澤瀉屋)
式神密虫:市川笑也(澤瀉屋)
藤原忠平:市川猿弥(澤瀉屋)
藤原実頼:市川中車(澤瀉屋)
三上山の山姥:市川門之助(滝野屋)
蘆屋道満:市川猿之助(澤瀉屋)
発端、将門と俵藤太の別れの場面から。2人からの挨拶があり、あっと今に7〜8年後、蘆屋道満の登場シーンは、騙されずに階段からの登場をばっちり目視。悪役だけど憎めない人物のようです。船弁慶っぽい悪将門の登場は新作能「将門」とかの詞章なのかな。影武者をしたがえて格好良い演出ですが、桔梗に弱点の右こめかみを知られあっけなく死亡。切られた将門の首がゆらゆらしながわ笑うのは怖い。相馬の錦の旗も綺麗です。
二幕目、安倍晴明を嗜めると言う道満に「パワハラはやめろ」などという猿弥さんの小ボケも楽しい序盤、やっと安倍晴明登場、『茨木』と似た趣向ですが、手は取り返せない。場面が変わり安倍晴明の家、盗聴器的な黒い虫、笑也さんの蝶々が素敵、そして途中で笛の名手源博雅と出会う壱太郎君演じる謎の美女、あっという間に惚れる博雅が可愛く、いきなり急接近、距離近っ。皆若いからか動きがスムーズなだんまりからの最後、ガマが滝夜叉姫と気付かない源博雅はむしろ幸せなのか。花道での興世王と滝夜叉姫の見せ場が頗る良さ、ガマから変化し、将門の腕を持った壱太郎君の右近君に向けた笑い顔が怖すぎる、腕を口に咥えたままの六方による引っ込みも素敵。
大詰、三幕目は常磐津連中による所作事、桔梗の前のくどきから。急に出てきた山伏が、やけに動きが切れてると思ったら、やはり鷹之資君か。福之助君、児太郎君、壱太郎君、鷹之資君、若くて華やかな4人の踊りは安心して見ていられる。百足軍団は、歌舞伎役者ではないのかしら、立ち回りが凄くて楽しい。最後の宙乗りは物語とあまり関係がなく個人的には必要ないかと感じます。意外に陰陽師の2人、特に主役と思われる隼人君の出番が、一幕目は全く出ないし少ない感じですが、外題を見ると滝夜叉姫と将門が主役なのかな。実の兄に切られる、切ない最後でした。猿之助さん演出らしく舞台転換もスムーズ、サービス精神も旺盛な楽しい演目でした。夢枕獏さんの小説も読んでみたい。
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