金春円満井会特別公演『鶏立田』『素袍落』『道成寺』国立能楽堂

金春円満井会特別公演『鶏立田』『道成寺』国立能楽堂
国立能楽堂で「金春円満井会特別公演」を拝見しました。

配役
金春円満井会特別公演『鶏立田』『道成寺』国立能楽堂

仕舞:『老松』金春憲和、『笠ノ段(芦刈)』山井綱雄、『西行桜キリ』櫻間金記
志ん朝師匠の出囃子の老松、扇の震えが気になる。颯颯とした笠の段、5年前の神楽公演で解説をしていただいた櫻間金記さんの西行桜が雅。

能『鶏立田(にわとりたつた)本田芳樹』
1961年に本田秀男により復曲初演、その後1998年に上演されて以来26年ぶりという稀曲。曲名を効いて思い浮かぶのはチキンタツタ、竜田揚げには2つの由来があり、1つ目は竜田川で、唐揚げの薄衣を紅葉に見立ててというもの。2つ目は日本海軍の船艦「龍田」で提供していたというもの。『鶏立田』は不思議な話で、龍田山に紅葉狩りにやって来た男が、そこで見つけた綺麗な鶏を息子のお土産に取って帰ったところ、妻が鶏に取り憑かれてしまったというもの。狂言方が間狂言以外で活躍するのも珍しい、平岡某に鶏を取って息子のお土産にしようと提案したり、鶏をとうとうとうの掛け声で確保したり、作り物の「祈祷台」を用意したり、重要な場面で登場。頭に板状のリアルな鶏を付けた鶏の亡霊は、祈祷台の幣を奪ったり、なかなかの怒りぶり。趣向は面白いですが、どこに共感してよいかわかりません。。。

狂言『素袍落(すおうおとし)大藏吉次郎』
40分と長めではありますが、シンプルに笑える狂言。シテの大藏吉次郎さん、伯父役の善竹十郎さん、おじいさん2人が大爆笑している様子に和みます。喋っている伯父に構わず「もし!もし!」と話しかけたり、「どこへっ!」と妙な返答をしたり、どもりまくる酔っ払いの太郎冠者に親近感。泥酔の太郎冠者にも寛大な伯父、その後の主人と太郎冠者の素袍を巡るやり取りも楽しい。とにかく大藏吉次郎さんの酔っ払いぶりが最高!

能『道成寺(どうじょうじ)柏崎真由子』
3年半ぶり3回目の『道成寺』、番組表に狂言鐘後見と記載があり何だと思いましたが、金春流は、話の流れで鐘を吊るすのか。凄い。鐘を吊るす時に、天井の吊り穴から紐が抜けてしまい一回目失敗、「これはいなこと」と呟く大藏彌太郎さんにほっこり。ほぼ女性の演者により面白い趣向ですが、体が小さいこともあり、全体的に軽やかな印象。終始緊張感が続く道成寺の中でも、乱拍子は一番好きな場面、踵を上げる所作はやはり軽く感じられますが良い。お声が高いからか、シテの怨みがましい唸るような音もよく聞こえ、鐘入りも卒なくこなされており安心。歌舞伎もそうですが、リアルが必ず良いとは言えないのが難しい。黎明を感じる舞台を拝見できて嬉しいです。

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