昨年末から世間(主に演劇界)をざわつかせていた新作歌舞伎『風の谷のナウシカ 昼の部』を拝見してきました。原作漫画も再熟読、映画も再見して下ごしらえは万全。原作が大好きなだけにかなり不安もありまりしたが、大満足!今年初めて1階席(4列目)で拝見しましたが、やっぱり迫力有ります!
配役
ナウシカ:尾上菊之助(音羽屋)
クシャナ:中村七之助(中村屋)
ユパ:尾上松也(音羽屋)
ミラルパ:坂東巳之助(大和屋)
アスベル/口上:尾上右近(音羽屋)
ケチャ:中村米吉(播磨屋)
ミト/トルメキアの将軍:市村橘太郎(橘屋)
クロトワ:片岡亀蔵(松島屋)
ジル:河原崎権十郎(山崎屋)
城ババ:市村萬次郎(橘屋)
チャルカ:中村錦之助(萬屋)
マニ族僧正:中村又五郎(播磨屋)
[声の出演]王蟲:市川中車(澤瀉屋)
まずは動いてなくてもキレのある尾上右近君の口上により、腐海、トルメキア、土鬼(ドルク)などナウシカの世界を説明。特注のタペストリー幕、格好良いですね。序幕「青き衣の者、金色の野に立つ」、腐海に飛び交うヘビケラ、ウシアブたち。なかなかリアル(架空の生物にリアルというのも可笑しいが)です。題名からもわかるように、除幕で映画の内容は終了。漫画でいうと全7巻のうち2巻の終わり頃まで。テトの登場、ペジテの避難船の墜落、風の谷へのトルメキア軍の襲来など展開早いです!冒頭のナウシカの台詞「怖くない。おびえていただけなんだよね。」は客席に向けられた台詞と思えなくもない。中村七之助さんのクシャナは予想通りのはまりっぷり。武者的なトルメキア装甲兵は1人だけ不自然にでか過ぎるのもグッド。おとりの王蟲の子供を釣った飛行ガメを落とすシーンではメーヴェに乗ったナウシカを遠見で表現。文楽ではお馴染みですが、それを人間(子役)でやっちゃうのが面白い!全体として気になったのはナウシカが小気味良くないことか。怪我とか色々あり相当大変だと思いますが、ちょっとお疲れ顏(目元とか)のナウシカ、胸も大きくないしね。また構成の問題ですが、赤子を助けるシーン(その後クシャナに預けるところも好き)とか毒に犯された兵士を助けるシーンとか風の谷の皆に愛されているシーンとかナウシカの慈愛に満ち、やさしさと猛々しさが混沌としたキャラクターを表現する場面がほぼ無く、存在感が弱いのが残念。「皆が姫様に恋しとる」な感じがしなかった。そして密かに市村萬次郎さんの城ババの再現度に期待したのですが、以外と普通。城ババと大ババの違いか?虫笛ならぬ光玉を使って虫を落ち着けます。最後の王蟲との交流はこうきましたか。あれが触手?中車王蟲も違和感なくお見事。和楽器による音楽も義太夫の演出もちゃんとはまっていて歌舞伎らしい世界を作り出していましたが。。。
序幕が微妙だったので、どうなることかと思いましたが、二幕目「悪魔の法の復活」は最高でした。まずは工房都市セム市の酒場の場面の踊子役で中村芝のぶさん登場。お綺麗です!が、後にナウシカの母役で一瞬登場していたのは気づきませんでした。。。蟲使いの村内の王蟲の培養槽をアスベルとユパで破壊するシーンは本水を使ってとても面白い演出。背中からぼっとんぼっとん池に落ちる土鬼兵が楽しい。右近君キレてます!ユパが手を交差して飛び降りるシーンもありましたが、流石に超人的には飛べないですね。ちょっとドキッとしましたが、大変絵になるお2人です。花道からの引っ込みは、アスベルの鳴り鍔からの蜘蛛手蛸足かと思いきやダブル飛び六方が鼻血級!!今日一番グッときたのはその後のマニ族僧正役の中村又五郎さんの熱演。爺さんだけで原作でも超格好良いマニ僧正。目はしっかり見えちゃってましたけど、あの涙は感動したっ!船弁慶のようなミラルパとの闘いも素晴らしい!あっ、米吉君のケチャも可愛いですね(もう少し強さがあってもよいと思いますが後半に期待?)。
昼の部最後の三幕目「白き魔女、血の道を征く」はトルメキア軍のコルベット内から。この幕では片岡亀蔵さんのクロトワが良い。タヌキっぷりが良く出ています。義経千本桜の梶原景時みたいになりたかったのね。チャッパ(銅拍子)を使った土鬼軍の鼓舞の踊りもグッド。クシャナの「うけとれ たむけだ!!」がカットされているのは残念でしたが「地獄の門を開けてくれるわ!」のオリジナルの啖呵は流石。古典も良いですが、こういうお役の七之助さん大好き。『野田版 桜の森の満開の下』『極付印度伝マハーバーラタ戦記』ときてナウシカで極まった感有り!クイの命を賭した頑張り(カットされてます)によりなんとか生還したナウシカ(乗らずに手綱を引いて登場)、クイが死ぬ場面は大好きなのですが、セネイの台詞もカイではなくナウシカの盾となった兵士への言葉に変更されているのは残念。土鬼軍を撃破したクシャナへの歓呼三声はわかりますが、傷心のナウシカへの歓呼三声はいらないのでは。クシャナの立ち合いはもっと見てみたいです。最後はメーヴェに乗ったナウシカ宙乗り!宙乗りは好きではないですが、これはとても良いシーン!!怪我があっただけに客席の嬉しさも一入。菊之助さん、最後はしっかりもってきましたね!来週の夜の部が楽しみです!エイエイオー否、ラーラーラー!!
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[…] ※『風の谷のナウシカ 昼の部』の感想備忘録。 […]