国立能楽堂で「9月開場40周年記念公演」を拝見しました。
配役
『翁 (おきな) 観世清和・野村萬斎(観世流)』
皇居外苑特別公演以来、2年半ぶりの『翁』、配役全く同じ。清和さんの立ち姿、座り姿が異次元の美しさ。萬斎さんの能楽堂が揺れる足踏み気迫も凄っ。面は、翁「白色尉/河内作」、三番叟「黒色尉/伝赤鶴作」でした。
能『清経(きよつね)恋之音取(こいのねとり) 大槻文藏(観世流)』
小書き「恋之音取」は笛方最高峰の秘技で、シテの出の際に、幕の方を向き、10分間程度の独奏を行う。笛の音がしている時にシテはじりっと動き、笛の音が消えると静止する。現世と幽世を繋ぐものとして笛の音はスバり。「道成寺」の乱拍子のような、シテと笛方の緊迫感が堪らない。そして笛方藤田流の竹市学さんの雑味の無い澄んだ音色が素晴らしい!ただ内容に関しては清経にも妻にも共感できず。2人も恨み合わずに、もう少し優しさがあれば。。。とはいえ若々しく、とても悲哀の溢れる清経の表情には胸が詰まります。切戸口につっかえて、なかなか出られず、帰りは座椅子のまま運ばれれていく、梅若桜雪さんは大丈夫なのか。能舞台もバリアフリーが必要なのかも。面は、シテ「中将/山田藤五郎作」、ツレ「小面」でした。
狂言『栗焼(くりやき)野村万作(和泉流)』
主人に頼まれた栗を太郎冠者が全部食べてしまうという単純な話。がらがらがら、ぱっちり(栗が弾ける音)、あちあちあちなど表現が楽しく、万作さんの可愛げのある所作にキュンときます。竃の神が食べちゃったという言い訳で結局なんとかなったのか。
能『山姥(やまんば)波濤ノ舞(はとうのまい)金春安明(金春流)』
とても不思議な話、『黒塚』の鬼婆や『嫗山姥』の金太郎の母八重桐のイメージとは全く異なる山姥。間狂言で山姥は空穂(矢入れ)、桶、木戸から生まれるという。木戸と鬼女を間違えるという、この雰囲気でとんでもないボケをかます。善悪不二、色即是空、煩悩あれば菩薩あり、仏あれば衆生あり、衆生あれば山姥あり、結局、山姥はどこにでもいて、誰もが山姥ということか。山廻りは輪廻転生六道輪廻、人生谷あり山あり、楽あれば苦あり、悟り涅槃に行けるものなどまずいない。百魔(百万)山姥が訪れたことは、山姥にとって、とてもテンションが上がる出来事だったのでしょう。見終わったあとも心に沈み止まる、底の見えない演目。前シテ「曲見/是閑作」、面は、後シテ「山姥/是閑作」、ツレ「小面/安次作」でした。
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