令和2年12月歌舞伎公演 第一部『三人吉三巴白浪』国立劇場

令和2年12月歌舞伎公演 第一部『三人吉三巴白浪』国立劇場
国立劇場 大劇場で令和2年12月歌舞伎公演 第一部『三人吉三巴白浪』を拝見しました。同演目は昨年10月に歌舞伎座で松緑和尚、愛之助お坊、梅枝お嬢で鑑賞しております。

配役
お嬢吉三:中村時蔵(萬屋)
お坊吉三:尾上松緑(音羽屋)
堂守源次坊:坂東亀蔵(音羽屋)
伝吉娘おとせ:坂東新悟(大和屋)
手代十三郎:中村萬太郎(萬屋)
捕手頭長沼六郎:中村松江(加賀屋)
和尚吉三:中村芝翫(成駒屋)

まずは序幕「大川端庚申塚の場」から。「厄落とし」と呼ばれるお嬢吉三の名台詞、最近「歌舞伎名セリフ集」で七代目尾上梅幸さんお嬢の「厄落とし」をよく聞いていますが、歌舞伎って同じ演目を見れば見るほど楽しくなります。杭に左足をかけて左手で左裾を取り、右手に刀を持って決まるのは十五代目市村羽左衛門型だそう。耳に馴染む七五調の時蔵さんの名台詞、じっくり聞かせていただきました。素晴らしい。もともとお声が低めなので、男声と女声の切り替えがあまりはっきりしないのと、実際のお嬢吉三(20歳前後)との年齢差は、歌舞伎とはいえちょっとだけ気になりますが。。。お坊とボーイズラブな感じが出ないのです!

芝翫さんは芝翫縞の着物、兄貴っぷりが良いです。「いざ、いざ、いざ」から、三人吉三の決めポーズはやっぱりかっちょいい。松緑さんの形がとても綺麗。今回のお坊の方が、和尚の時よりずっと良い気がいたしました。兄弟の契りの杯、すごく良い場面なんだけど土器(かわらけ)を3人で回し飲み(しかも血液)するので、大丈夫かーとどうしても考えてしまう嫌な世の中です。河竹黙阿弥の七五調と渡り台詞、聞いていてとても心地良い。役者さんもきっと気持ち良いんでしょうね。

30分の休憩を挟んで二幕目、第一場「巣鴨在吉祥院本堂の場」から。伝吉娘おとせは、隅田川に突き落とされたり、兄に殺されたり、この話では散々。新悟君お声が素敵で、幸薄な感じもよく出ています。第二場「同 裏手墓地の場」は凄惨です。シビアな展開が続くので、軍鶏を捌くのが上手な源次坊役の亀蔵さんが癒し。早桶に突き倒されて蠢く様子が可愛いです。

最後は大詰「本郷火の見櫓の場」、清元、竹本による浄瑠璃「初櫓噂高嶋」に乗せて。お坊は花道、お嬢は上手からの登場ですが、お坊は竹本の、お嬢は清元の語りに合わせた動作と渡り台詞が緊張感があり見応えあります。お嬢の衣装は八百屋お七と同じ赤と浅葱色の麻の葉段鹿の子振袖。「夜風に邪魔な振りの袖」で、両振袖を結んで背中に回すお嬢が素敵。櫓が一度下がり上がるのも歌舞伎らしくて最高。終盤にちょこっとだけ登場する八百屋久兵衛も良い味出してました。この後三人は刺し違えて死んでしまうという展開ではありますが、うまく逃げ果せたと思いたいです。

筋や台詞など名作と呼ばれるだけあり素晴らしく、別の配役で何度も見てみたい『三人吉三巴白浪』です。

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