昨年末以来、お江戸上野広小路亭「第353回 講談広小路亭」にお伺いしました。12時スタートですか、10時半頃から整理券配布、9時から並んでいた方もいらっしゃったそうです。
前座:神田紅希「真田幸村 難波戦記」
神田紅純「犬殿様」
徳川家光と家綱の間に、実は家光の愛犬の万珍丸(ポメラニアン)が殿様をしていたという面白い設定の話。犬の鳴き声が可愛い。
神田真紅「連雀町縁起」
神田須田町はもともと連尺(=物を背負うのに用いる背負子、肩に当たる部分を広く編んで工夫したもの)を作る職人が沢山住んでいたので連雀町と呼ばれていたそう。明暦の大火で江戸が焼けてしまった後の、松平信綱(知恵伊豆)による区画整理の話。持ち時間が短いため面白くなる前に大体終了。
神田蘭「桂昌院」
八百屋の娘という低い身分から徳川家光の側室となり、五代将軍となる綱吉を産んだお玉の話。諸説あるが「玉の輿」の語源となったとか。家光の側室「お万の方」に仕えていたが、湯気で顔がはっきり見えない風呂場で家光に見初められた件が爆笑。
神田阿久鯉「慶安太平記 宇都谷峠」
増上寺の僧伝達と甚兵衛(実は高坂陣内)の交流を描く。長い話の一部なので一度通しで拝見してみたいものです。甚兵衛は悪どい奴ではなく、頼れる良い奴として描かれており、伝達も最初はびびっていたが、だんだん強靭な甚兵衛の魅力に惹かれていき、ちょっと男色の様相も。甚兵衛が紀州三度の金飛脚を襲い三千両を奪った所で終了。続きが気になります!
神田鯉風「谷風の情け相撲」
前回、伯山さんが読まれていた演目。谷風の人の良さと苦労が偲ばれます。人によって内容が若干異なるのが興味深い。
神田陽子「唐人お吉」
昨年下田に旅行したので新鮮な話でした。調べてみると事実からは大幅に脚色されているのか。結婚を誓った大工鶴松との別れが辛い。「駕籠で行くのは お吉じゃないか 下田港の 春の雨 泣けば椿の 花が散る おきの黒船 ちぎりでみえぬ 泣けば涙で なおみえぬ 泣くに泣かれる 明烏」
神田松鯉「柳田の堪忍袋」
たっぷり聞かせていただきました。浪人の柳田格之進と質屋の主人万屋源兵衛は囲碁仲間、囲碁をしている最中に番頭徳兵衛が渡した50両が紛失。源兵衛は格之進が盗むわけがないと窘めますが、番頭は独断で格之進の家へ掛け合いに。無実の格之進は、疑われたことに責任を感じ、切腹しようとするが、娘きぬが止め、自身が吉原に身を売り50両を作るのが切ない。起承転結がしっかりしており、とても面白い話でした。松鯉師匠の想像が膨らむ、重みのある語り口も素敵でした。
神田紅佳「南総里見八犬伝 発端」
神田伯山「文化白浪 いかけ松」
真面目で優秀だが貧乏な鋳掛屋松五郎が、悪に目覚めるところまで。両国橋の上で子供に草履も買えない枝豆売りの母親と、下の隅田川でどんちゃん騒ぎをする裕福な人々との対比が鮮やか。メリハリ付けすぎて聞き取り難い部分もありましたが、流石の臨場感!
神田紫「人魚の海」
井原西鶴原作の話、太宰治も井原西鶴の話をベースに小説を書いているが、今回の話は西鶴版に近いよう。父と娘の2人で人魚を探し続ける、これも切ない話。娘はついに狂って、溺れ死んでしまいますが、ハッピーエンドかどうなのか。当時は女性講談師がよくしていた演目だが、最近は滅多に掛けられないとか。なかなか深みのある講談でした。
神田紅「お富の貞操」
芥川龍之介の小説が元、小説では乞食の新公が主人公ですが、神田山陽師匠がお富を主役にして再構築したものだそう。落ちがあるようで無いような。原作も読んでみたい。
神田愛山「大高源五 両国橋の出会い」
赤穂義士伝の一部。大高源吾(子葉)と宝井其角、松浦侯が登場人物で歌舞伎の『松浦の太鼓』と似た内容。歌舞伎は松浦侯が主役ですが、講談では其角が主役。「年の瀬や 水の流れも 人の身も あした待たるる その宝船」の意味を考え続けるのは其角。やっぱり語り口も粋で、愛山師匠好きだな。歌舞伎と共通する演目はとても楽しいです。
今日は女性講談師が多い会、前回同様4時間でしたが、椅子がちょっとグレードアップしており、座り心地も良くなっていました。大事です。またタイミングが合えばお伺いしたいです。
コメント