昨年10月、大阪北新地から銀座に移転した「鮨 さえ㐂」にお伺いしました。北新地のお店はクローズ、京都南禅寺にも店舗は若い方に任せており、1週間は京都で、3週間は銀座で仕事をされているそうです。店内はかなり広々、一直線のカウンター8席の、内装、器など比較的華美を感じる空間も大阪気質か。30年ほど大阪で仕事されてきたという佐伯親方はとても活気のあるお方で、明らかに話しやす気。銀座の鮨店とは雰囲気からして全く違うのが面白い。
今日は何故か黒龍祭りということで、「九頭龍 大吟醸」のお燗からスタートです。
摘み「とこぶし、うぐいす菜、聖護院かぶの椀」「のれそれ」「唐墨 海老芋ディップ」「天然とらふぐ」「蟹しゃぶ」
握り「赤身漬け、大トロ、小肌、墨烏賊(下足付き)、鯖棒鮨、車海老、あじ、ブリ、バフンウニとイクラ小丼、はまぐり、トロタク」
追加「あなしん、干瓢巻き」
「のれそれ」
穴子の稚魚、通常春くらいによく見かけるものですが、走り。鮮度が良いため麺つゆで。香りのとても素敵な素麺です。
「唐墨 海老芋ディップ」
唐墨は沖合いのボラほど臭みが少ないそう。宮崎県の沖合いで取れたもので、もちろん自家製。仕上げに黒龍を使っています。「黒龍祭り」も納得。通常有りえないくらい厚切り(1cmくらい)、高級品のため自宅だと独り立ちできない薄さに切ってチビチビいただきますので、とてもとても贅沢、そして絶品。唐墨史上一番です。海老芋とバターを合わせた甘いディップも面白い。唐墨と相性がそれほど良いとは思えなかったですが、トーストに付けて食べたら美味しそう。
「カマ焼き、焼き白子、フグ皮」
虎河豚は今年初めてではなかろうか。嬉し。最初見せていただいた白子のサイズから見て、立派なフグ。醤油を付けて焼いた白子は自然薯ワサビを添えて、う〜ん、良質なフグってやっぱり美味しい。舌にねっとり絡みつく法悦な旨味。堪らん。コラーゲンたっぷりのふぐ皮(身皮、とうとうみ)は白菜、浅葱と和えキャビアの塩気で。3点セットで一番良かったのはカマ焼き、食べる部分もいっぱいあり骨まで尽くす気で夢中に貪ります。上品さは捨て去った方が身のため。フグは淡白と言われますが、そんなことはありません。あま〜い!
「蟹しゃぶ」
ピンクのタグ付き兵庫県柴山港のズワイガニ。宮古島のぜんまい、八丈島の江戸前?椎茸を合わせます。どちらも蟹に負けない力強さ。爪部分は一口で、細かな繊維質で心地よい口触り。出汁も美味しい。続いて握り。
「赤身漬け、大トロ」
大間産180kgのマグロ、赤身漬けは天身(背骨の周り)の部分で香りよく絶品。トロはやや繊維が気になるか。シャリは赤酢で、自店のためだけに栽培した粒の大きいコシヒカリを使用。酸味のインパクトはありませんが、ごく弱い圧力により口の中で解ける綺麗な仕上がりで、米の旨味を感じさせる。温度はやや低く感じるでしょうか。所作に無駄はなく、握り姿も美しい。シャリは良いサイズですが、タネは全体的にやや薄く感じるのはおそらく、ご飯とのバランスを考えてのことか。個人的にはもう少し厚い方が好きですが。
「寒ブリ、アジ」
ブリは10kgオーバーのものを10日間熟成で旨味は十二分、この時期珍しいアジは生姜と芽ネギで三重産の瀬付きの小アジは爽やかな旨味。
「鯖棒鮨、車海老」
軽く炙った海苔で巻いていただきます。〆鯖より絶対棒鮨が旨いというお言葉通り、脂とシャリの一体感が絶妙。何個でもいけそう。車海老も小ぶりながら甘みが口の中に広がり美味。
「煮はまぐり、トロタク」
この時期に、こんな美味しい煮はまぐりをいただけるとは驚き。とても柔らかく、サクッと噛み切れる。甘味強めのこっくりとした詰め、シャリとのバランスも素晴らしい。江戸前鮨の取りでお馴染み「穴子」が出なかったので、尋ねたところ、煮物は二品はくどいというお考えのよう。最後はトロタクで締め、あまり食べた記憶はありませんが、美味しいものですね。大トロは繊維が気になったのでこの食べ方のが好き。素晴らしいマグロです。酢橘を絞る小肌、柚子と酢橘のスミイカがやや力不足か、貫数が足らないので追加。
「あなしん、干瓢巻き」
なんか大阪っぽい珍しい巻物有ります?との問いから出していただいた関西発祥という「あなしん」は穴子とお新香(沢庵)巻き、穴子もちゃんと用意されているのが嬉しいですね。鰻バージョンの「うなしん」もあるそう。程よく脂の乗った穴子とコリコリとした沢庵の食感と爽やかさが相性良く美味。ただ巻物がそれほど得意でない印象。。。
佐伯大将のこだわりにより玉子は無し。デザートは熊本菊池市の巨大イチゴ「ひのしずく」、矢島靖雄さんが丹精込めて作ったものだそう。下の練乳も優しく、酸味少なく甘々で美味しい。
「摘みが絶品だが、握りが弱い」と聞いていたのですが、握りもとても美味しく思いました。特に煮はまぐりの仕上がりは本当に印象深い。また銀座の有名鮨店の後継に決まっていたのに反故にされてしまったお話、シャリ(米)へのこだわりのお話なんかもとても興味深く拝聴いたしました。江戸前鮨と名乗るなら絶対ご飯が美味しくなければいけません。私は今日初めて知りましたが、銀座の有名鮨店に4代目に決まっていたというのは有名なお話のよう。佐伯親方の料理をいただいて、決まらなくて良かったのではと感じました。もちろんどんな状況でも上手く立ち回れるお方なのですが、魅力が半減とは言わないまでも減少するのでは。そして驚いたのはお会計、予約した際に確認し、覚悟してきてお値段よりも、お安い!とても得した気分になり、この価格だったらもう一度行きたいなとも。佐伯親方の策略?親方の明るい気質もあり、お鮨大好きな客同士でも和気藹々と、楽しい時間を過ごさせていただきました。お鮨はできれば昼にいただきたいのですが、また季節を変えてお伺いしたいお店が増えてしまいました。。。ごちそうさまでした!
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