日本料理 日本酒ペアリング「ふしきの」神楽坂

神楽坂にあるミシュランガイド1つ星、日本料理と日本酒ペアリングのお店「ふしきの」にお伺いしました。神楽坂に来るのは5年ぶり2回目くらいですが、夜のメイン通りってこんな感じ!チェーン店が居並び、電飾チカチカで風情無くイメージと違います。。。「ふしきの」は神楽坂通りから横に折れた、落ち着きのある本多横丁沿いにあります。変わった店名は千利休の「不思議」や禅語の「不識」に通じる言葉だそうです。

「鮟肝豆腐」x「宗玄 純米無濾過生原酒 山田錦」
「鮟肝豆腐」ふしきの
ワラビ、芽キャベツ、土佐酢のジュレ。日本酒は一度氷をくぐらして、より爽やかな印象に。日本酒のお店ですとチェイサーのお水は必須ですが、「ふしきの」では和紅茶。料理と日本酒の流れを切らさないためという説明に妙に納得。素晴らしい。

「牡蠣真薯の椀」x「磯自慢 しぼりたて本醸造 生貯蔵 + 磯自慢 純米吟醸生原酒」
「牡蠣真薯の椀」ふしきの
唐墨、平貝、蕗の薹。牡蠣はそれほど好きな食材ではありませんが、嫌味無く仕上げてあります。崩してお出汁と一緒にいただくととても美味しいです。磯自慢をブレンドしたものはぬる燗で。

「墨烏賊、金目鯛の造り」x「十旭日 純米吟醸生原酒 山田錦55 26BY + 十旭日 生酛純米 御幡の元気米 加水火入れ 29BY」
「墨烏賊、金目鯛の造り」ふしきの
江戸前の墨烏賊は処理も美しく、味も綺麗です。日本酒は大好きな十旭日。家だと摘みがスナック、オリジン弁当の惣菜、良くてスーパーの刺身程度なので、手の込んだ料理と一緒にいただける幸せを感じます。

「サワラ揚、鮟肝」x「中島屋 大吟醸古酒 6BY + 中島屋 純米無濾過生原酒」
「サワラ揚、鮟肝」ふしきの
サワラを低音調理したものに、下は白菜ソース、上の蕗の薹ソースはやや諄く感じるでしょうか。面白いとは思いますが、まとまってない感じ。山口県周南市の日本酒「中島屋」は初めていただきました。

「穴子の炊き合わせ」x「田村 生酛純米」
「穴子の炊き合わせ」ふしきの
筍、京人参、京いも、なばな。シンプルイズベストな料理にはシンプルなお酒。田村もとても好きな銘柄です。

「八寸」x「無窮天穏 齋蔵 生酛純米大吟醸」
「八寸」ふしきの
鴨ロース、小肌、鯖棒鮨、赤貝ぬた和え、ナマコ、海老、飯蛸、松風、卵焼。最後に八寸が出て、日本酒を存分に楽しめる趣向は素敵。天隠の齋蔵(さくら)は燗冷ましで。初めていただきましたが絶品。大吟醸でも磨きは50%で、米の食感と存在感を強く感じます。どれだけ磨くかをアピールしている日本酒もありますが、こういう酒が大吟醸の本質ではないでしょうか。小島達也杜氏の最高傑作と言うだけあります。茨城県日立市の「森嶋 純米大吟醸 雄町」も初めていただく銘柄。平杯と筒型杯で変わる味の違いを楽しませていただきました。

「蛤のにゅう麺」x「無窮天穏 やまざくら 山廃純米大吟醸原酒」
「蛤の煮麺」ふしきの
追加でいただきました。優しいお味です。

「百合根饅頭」
「百合根饅頭」ふしきの
最後は大好きな百合根の饅頭と店主の宮下さんに点てていただいた薄茶で。

料理は堅実ではありますが、そこまで印象に残るものではありません。ただ日本酒、器の組み合わせに、一番の魅力は「ふしきの」の世界観を作り出している店主宮下さん。ナチュラルな着物姿で端正なお顔立ち、清潔感たっぷりで動きに無駄が無く見ていて気持ちが良く、発する言葉の輪郭もしっかりしていて力があり確固たるパーソナリティを感じます。同性でも惚れるわ。私は料理におけるマリアージュという表現はどうにも理解できない(むしろ嫌い)のですが、一緒に飲み食いしてストレス無く、美味しく感じるというのが相性が良い、調和しているということでしょうか。結局「無窮天穏 齋蔵」なんて何と合わせたって美味しいことだし。

注いでいただける日本酒の量も多く、酔っ払ってしまいました。様々な温度帯でいただけるのに加え、ブレンド、燗冷まし、器による味わいの違いなど様々な方向から日本酒を楽しめる工夫がとても良い。外国人や日本酒を飲みなれない方は、日本酒の世界がグッと広がるのでは。これでペアリング代6,000円は良心的です。日本酒好きにはとても嬉しいお店で、食べて飲んで楽しく過ごせるのが一番です。また宮下さんに会いにお伺いしたいと思います。ごちそうさまでした。

※2020年6月、店主の宮下さんが交通事故により急逝されたと聞き、大変な衝撃を受けました。1度、客としてお会いしただけですが、日本酒、酒器など日本伝統文化の未来を担う本当に素敵な方だっただけに残念至極。心よりご冥福をお祈りいたします。

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