昨年11月に白金台にオープンした中華料理店「ShinoiS シノワ」にお伺いしました。オーナーシェフの篠原裕幸さんは、日本では「赤坂璃宮」、「ロウホウトイ」、ペニンシュラ東京の「ヘイフンテラス」での経験を経て、香港へ。その後も色々と話題となった凄腕シェフだそうですが、見た目がとても若々しいのにびっくり。現在39歳だそうですが、シェフというよりセンシティブで哲学者のような面持ちの素敵な方です。
カウンターの一番奥に座ったのですが、目の前に岐阜県飛騨地方の伝統人形「さるぼぼ」が!シェフの奥様が岐阜出身だそうで、カウンターも樹齢190年の立派で美しい美濃杉を使用されています。料理は前菜三種から。
「芝士春巻」
24ヶ月熟成コンテチーズ、キャビア、中にはシュモクザメとヨシキリザメの鱶鰭。フカヒレも太さが違うため食感にアクセントが出ています。一品目からインパクトがある料理で期待できます。
「杏仁豆腐」
アサリ、鶏の出汁で作った焼き杏仁豆腐。和食の焼き胡麻豆腐のアレンジといったところ。すごく美味しい訳ではありませんが遊び心のある試み。
「酸蘿白高」
大根餅です。上には蕗の薹、甘エビ紹興酒漬け。最後に抜ける蕗の薹の苦味が心地よし。
「干鍋墨魚 アオリイカ、四川干鍋仕立て」
アオリイカのねっとりしたテクスチャも生かされています。辛味との愛称は間違い無しです。
「齋灌湯餃 vegi トロ蕪、野菜コンソメ」
確か野菜以外は使っていないコンソメだとか。蓋を開けると濃厚なトリュフの香り。流石に上質な上湯の旨味はないですが、強い甘み。面白いです。
「等待春天 鰤、ヤーコンの沢庵」
梅酒で揉んだ蕾菜も。皮で巻いていただきます。なかなか美味しい鰤でした。
「真味干鮑 水仕込みの吉浜産干鮑」
「シノワ」のスペシャリテは、水だけで1ヶ月ほど掛けて仕上げられた干鮑。これは絶品。ピュアな干鮑ってこんなお味なんですね。噛むほどに出汁のような旨味を感じ、スープも美味しい。鮑はそこまでテンションは上がらないのですが、素晴らしい素材なのだと改めて感じさせられる料理でした。
「麻醤脆鳥 ホロホロ鳥、里芋ソース」
芝麻醤、胡桃。量は少ないですが、久々に美味しいホロホロ鶏いただきました。もっと食べたい。
「芫香鮮魚 宮崎ねこや商店より本日の鮮魚、香菜、富士酢」
太刀魚ですが、普通のものではなく鹿児島で水揚げされる「テンジクタチウオ」「キダチ」などと呼ばれる3kgの超大物。思ったより脂は感じず酢と香菜で軽く仕上げられています。白身はごく柔らかで美味。
「雲南水煮牛肉 なにわ黒牛、雲南の薫り」
部位はランプ、雲南豆豉、柚子胡椒などの辛いソース。わりと普通。
「今天麺飯」麺と炒飯を好きな量で。もちろん両方大盛り。
雲呑タンメンはアサリ、牡蠣、鶏、豚、太刀魚の骨の出汁の雑味無いスープも飲み干します。土鍋で炊きたての白米で作ったパラパラ炒飯は特徴あまり感じず。イクラと完全に混ぜて食べた方が美味しかったかも。
「鯖棒鮨」
黒酢で締めた鯖、酢飯も黒酢を使用し山椒のアクセント。これもなかなかチャレンジングな一品。面白みはありますが、ちゃんと美味しい。確かシェフの賄いとのことでしたが、それにしてはレベル高過ぎて笑えます。
おまけ「鴨焼売」
びっくりするほど柔らか。お口で溶ける焼売は初めて。
「甜品 酒釀のプリン、紀州原農園より数種の柑橘」
酒釀のプリンに五種の柑橘、八朔のソルベ、春峰のジュレ、安藤みかんのブリュレ、紅まどかと晩白柚との果肉。
「生月餅」
金柑、カスタードソース。福が逆さになっているのは春節の際に家々に貼られるという中国伝承の「倒福」。福気・福運の意味があるそうな。生月餅って初めてかもしれませんが、滅茶美味しい。
終了まで3時間ほど、締めの料理も多くてお腹いっぱいになるというのは満足感において重要な要素の1つ。しっかり素材の味を感じられるモダンな中華料理はシェフの素晴らしいセンスと技量、研究心を感じます。「旨い!」というよりは「面白くて美味しい!」という皿が多いのは今時の流行でしょうか。そういう料理が作れるっていうのは凄い才能で、そういう料理人のお店は予約が取りにくいことが多いように思います(こちらもそうですが)。スペシャリテの鮑など印象的な料理も多く、サービスも大変丁寧で、楽しい時を過ごせました。オープンしたばかり、まだまだシェフもお若く、今後が楽しみなシノワです。ごちそうさまでした。
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