八月花形歌舞伎 第三部『義経千本桜 吉野山』を拝見しました。後で気が付いたのですが、今日が千穐楽だったのか。どうりで、思ったより盛り上がってるはずです。
配役
佐藤忠信実は源九郎狐:市川猿之助(澤瀉屋)
逸見藤太:市川猿弥(澤瀉屋)
静御前:中村七之助(中村屋)
本名題「道行初音旅」、歌舞伎らしい所作に溢れた演目です。清元、花道から静御前の出、好みで言うと吊り目より垂れ目なのですが、七之助さん、お綺麗です。この前にシネマ歌舞伎で中村屋の「連獅子」を拝見したので、13年の間の変化に驚きました。俤はあるものの、同じ方とは思えないな。スッポンから佐藤忠信の出、猿之助さん、やや恰幅が良いものの、お役そのもの。
徳若にご万歳とは 君も栄えてましんます 愛嬌ありける柳ごし よい中村のやぐら幕 櫓太鼓のにぎにぎと 商い神の若えびす 繁盛まします その御徳に 御田の稲には穂に穂を栄え 宝御船萬石舟 色の実入りに今年綿 誠に目出度う さむらいける
やしょめやしょめ 京の町のやしょめ 売ったるものは何々 はまぐりはまぐり 蛤 はまぐりはまぐり はまぐり見さいなと売ったるものは何々 はまぐり早き貝合わせ
弥生は雛の妹背中 女雛男雛と並べておいて 眺めに飽かぬ三日月の 宵に寝よとは きぬぎぬに 急かれまいぞと恋の欲 桜は酒が過ぎたやら 桃にひぞりて後ろ向き 羨ましうは ないかいな
清元による美しい語り、ただ清元も良いですが、個人的にはその後の義太夫による「錣引き」「屋島の合戦」の勇ましいパートが好き。猿之助さんの安定感のある所作は見ていて気持ち良い、指の先までビシッと決まっています。狐的な妙な動物的行動も見事、身体能力高いなぁ。コメディ部分の猿弥さんも、素晴らしい剽軽っぷりで最高。演者に掛けた洒落も決まっていました。弱そうなビジュアル通り、花四天ともども忠信にあっけなくやられて、最後は狐の妖術で操られ、2人の旅立ちの準備を手伝わされる始末。
静御前が引っ込んだ後、忠信は髪型が変わり、白地の宝珠の衣裳(どうしても燃える巻き○ソに見えるが)にぶっかえり、場所的に狐六法での引込みはあまり見られず。。。狐六法は澤瀉屋ならではなのでしょうか、歌舞伎らしい華やかな終わり方が素敵で、大きな拍手が挙がっていました。1時間なのであっという間ですね。来月の「九月大歌舞伎」もとても楽しみです!
※本日、内海桂子師匠が逝去されたとの発表がありました。2019年1月に浅草公会堂で開催された「新春 爆笑!浅草演芸会~内海桂子と名人芸~」で拝見した舞台は今も記憶に強く残っています。三味線の調弦が上手くいかず、ご主人も登場するなど、ハプニングも発生しましたが、泣くほど笑わせていただきました。客席をしっかり笑わせにいってることに驚愕、96年の時を篤実に生きてきた内海桂子師匠にしか無し得ない素晴らしいパフォーマンス、1つの芸を突き詰めてきた方の生き様を見た気がいたします。ありがとうございます。心よりご冥福をお祈りいたします。
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