先月の三谷文楽『其礼成心中』はさておき、半年振り以上の国立劇場での文楽公演再開です!と思いきや初日5日の第一部のみ上演して、いきなり休演!7日のチケットでしたので、ドキドキでしたが、何とか再開!!本当にギリギリの状況で、関係者の皆様の心労いかばかりかとお察し申し上げます。
気を取り直して第一部、一題目は『寿二人三番叟』から。何も考えずに純粋に楽しめる演目です。2017年1月大阪府日本橋の国立文楽劇場で初めて文楽を見たのですが、その時も「国立劇場開場五十周年を祝ひて」ということで最初の演目は『寿二人三番叟』でした。やっぱり床に太夫、三味線がずらっと居並ぶと迫力あります!カシラは凛々しい検非違使と、少し抜けた感じの又平、又平が疲れて休むのは覚えていたのですが、その後で検非違使もちゃっかり休んでるんですね。躍動感のある動きも良かった(チラシの躍動感も凄いゾ!)。立ち見だったら、こっちも踊りたくなっちゃうでしょうね。どうか早く、今までに近い、平穏な日常に戻りますように。
二題目は近松門左衛門作『嫗山姥(こもちやまんば)』「廓噺の段」です。こちらは今回初めて知った演目でした。例によって人間関係がけっこう複雑、煙草屋源七、実は坂田時行と元傾城の荻野屋八重桐は夫婦、時行の妹が糸萩。この兄妹が、父を討った武士を別行動で探して仇討ちしようとしているのですが、時行が知らないうちに糸萩が仇討ちを済ましていました。沢鷹姫は源頼光(らいこう)は許嫁なのですが、頼光は糸萩を匿ったため危うい立場に。
ただ、そんなことは知らなくても楽しめる演目です。見所の1つは八重桐の長台詞、同じく近松門左衛門の歌舞伎作品『けいせい仏の原』で、初代坂田藤十郎の独断場として有名だったもののアレンジ。時行と八重桐、小田巻2人の遊女の三角関係、喧嘩の話、題名の「廓噺」とはここのこと。千石船いっぱいの手紙とか一石六斗三升五合五匁の鼻血とか屋根で踊る鼬とか、上方らしい盛りに盛った神武以来の悋気諍いが楽しい。かなり激しい動きですが八重桐を使う桐竹勘十郎さんも見事!手先や首の僅かな動きなど、微妙な動作で女性が本当に嫋やかに見え、それがこの後の変化にも効いてきます。
腹を切った時行の念(焔の魂)が八重桐の腹に宿り、八重桐覚醒、着物がぶっかえり、髪はざんばら、手足も伸びているでしょうか、槍を盛った花四天を素手でぶんぶんぶん投げる快感、一瞬で顔が鬼女(角なしガブ)に変わるのは何度見ても興奮!この辺りは歌舞伎では表現しにくいアニメーション的世界。そんな激しい動きも違和感が無し、勘十郎さん、やっぱり凄いな。この時に腹に宿った子供が金太郎(坂田金時)で母八重桐は山姥になっちゃったいうファンタスティックなお話。第一部は義太夫よりも人形がメインの楽しい第一部でした。
開演前、NHK「古典芸能への招待」の方にインタビューされましたが、巧く答えられません!密かな情熱だけはあるのですが、言葉にするのは難しい。太夫が大活躍しそうな第二部『鑓の権三重帷子』も期待しています!
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