国立劇場で令和5年5月文楽公演 第二部『菅原伝授手習鑑 二段目』を拝見しました。
配役
『道行詞の甘替』から、棒手振の飴売りにやつした桜丸、担ぐ木箱の中に斉世親王と刈谷姫が隠れているのが凄い。ちょっと眠くなる道行でした。『安井汐待の段』は東京では51年ぶりの上演だそう。清十郎さんの遣う判官代輝国の棒立ち無感情ぶりが笑えた。見る角度の問題なのでしょうか。やはり『杖折檻の段』からが面白い。覚寿が登場する際の「後ろより〜」の芳穂太夫さんの語りが不気味で素敵。女性3人の感情の交錯、そして玉助さんの遣う宿禰太郎、登場の柱にもたれる立ち姿が格好良い。でも、この格好良さ、全部フリなのね。『東天紅の段』は羽がパタパタ動く鶏が可愛い、鈍い宿禰太郎が妻の立田前を惨殺する場面は痛々しい、人形ならではのむごたらしさ。父親の土師兵衛が挟箱の蓋に鶏を乗せて池に浮かべるのを見て大爆笑する宿禰太郎、妻を殺した後なのに、親の脛齧りの純粋なバカなのだね。
続く『宿禰太郎詮議の段』は、真剣な場面で、脇の下や背中を手拭いで拭くコミカルな奴宅内は少し煩い。豊竹呂勢太夫さんと鶴澤清治さんの重々しい義太夫で、なかなかキツい段です。『丞相名残の段』は、菅丞相の木像の不思議、刈谷姫の赤い小袖を掛けた伏籠、ずっと冷静(冷徹)だった菅丞相が始めて感情を露わにする姿にグッときます。今日は上手側5列目、床近くの席、右を見れば千歳太夫さんの体と口を上下に大きく動かし命を削るように語る姿に感動。一列目も良いけど、床近の席も良い。最後は我慢できずに伏籠から飛び出す刈谷姫、歌舞伎の印象も同じでしたが、この2人の情愛は養子だからか、親子以上の少し怪しげなものを感じます。9月の三段目から五段目も楽しみにしております!!
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