没後10年 女優・淡島千景『大番』『鰯雲』神保町シアター

神保町シアター「没後10年 女優・淡島千景」
神保町シアターで特集企画「没後10年 女優・淡島千景」で映画を二本拝見しました。

大番 青春編(1957年 監督:千葉泰樹)
出演者:淡島千景、加東大介、原節子、仲代達矢、小林桂樹、河津清三郎、東野英治郎

獅子文六の小説が原作なのか。46歳の加東大介さんが18歳を演じているのはちょっと無理があるが、科白に「18歳にしては老けてるな〜」みたいなものもあり笑える。加東さんってもともと歌舞伎俳優なんですね。最初朴訥な雰囲気なのですが、兜町の株屋になってからは、言葉は田舎言葉なのに、態度は豹変。いや、朴訥に見えたのは服装と貪り食っていた目刺しのせいだけで、もともとこういうキャラか。淡島千景さん演じるおまきを手篭めにして惚れさせ、結婚してと言わせて振るという非道ぶり。嬉しそうに初恋の人の写真を見せるのも理解できないが、こういう男に惚れるものなのか。

歌舞伎座で『伽羅先代萩 御殿の場』を見て号泣するギューちゃんを見て泣きそうになったが、政岡を演じていたのは六代目關三十郎(尾張屋)なのか。映像として貴重!愛媛宇和島の資産家令嬢の可奈子役は原節子さん、写真だけの登場かと思いきや最後の歌舞伎座の場面で数秒登場!インパクトが凄いな。有難や。満州鉄道とか鐘紡とか時代を感じられて良いし、悪どい役が多い気がする仲代達矢さんが凄い良い人を演じていたのも新鮮で素敵。やっぱ男前だわ。最後は大損するも、再起を誓って故郷に帰る丑之助でした。

鰯雲(1958年 監督:成瀬巳喜男)
出演者:淡島千景、新珠三千代、司葉子、中村鴈治郎、杉村春子、木村功、飯田蝶子

成瀬監督初のカラー映画だそうで、俳優陣も非常に豪華。厚木近郊の農村のお話なのですが、八重役の淡島千景さんの華やかさは隠しようもなく、農家の嫁には見えず違和感があります。昨年末見た『赤坂の姉妹より 夜の肌』に続き新珠三千代さんとの共演ですが、今回はそこまで見所なし、車の運転の練習している設定が同じで面白い。八重の姑役は飯田蝶子さん、『長屋紳士録』のイメージだったのでババァ過ぎてびびりましたが、あの独特な首の動きで認識。

『銀座っ子物語』同様、この映画も結局一番良いところを持ってったのは、子供達や分家にどんどん追い込まれていった和助役の中村鴈治郎さんでは。最初はウシガエルのようにのしのし歩いていたのに、だんだん頰がこけて白髪も目立ち真夏のペンギンのように。別れた(祖父に追い出された)妻とよ役の杉村春子さんとの二人きりの会話が素晴らしかったな〜。農家って大変なのね。結局、和助と同じく家を意識しているのは八重なのかもしれません。最後、不倫相手の大川(いけ好かない!)を見送りに行かず、一人で田んぼを除草する八重から鰯雲へ。このシーンだけで泣きそうになりました。129分と長めで途中寝落ちしてしまったものの、「なしくずし結婚」「貸鋤(ちんすき)」などの新語も覚えられ、とても興味深い映画でした。
大番 青春編(1957年 監督:千葉泰樹)

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