映画監督・木下惠介-歓びと哀しみの人間模様『春の夢(1960年 監督:木下惠介)』神保町シアター


久しぶりの神保町シアター、企画「映画監督・木下惠介-歓びと哀しみの人間模様」にて『春の夢』を拝見しました。

配役
奥平千鶴子:岡田茉莉子
奥平庄兵衛:小沢栄太郎
奥平祖母:東山千栄子
奥平多美子:丹阿弥谷津子
奥平守:川津祐介
矢杉和子:久我美子
花村医師:佐野周二
渥美信一郎:笠智衆
加東栄一:田中晋二
江間:森美樹
八重:荒木道子
君子:中村メイコ
梅子:十朱幸代

ほとんど屋敷の中で展開され、人物の登場の仕方、入れ替わり方は完全に演劇仕様で面白い。岡田茉莉子さん演じる千鶴子が「ろくな人間いないんだもん、この家には!」と言う通り、千鶴子含め変人ばかり。金持ちには金持ちの、脳溢血で倒れた焼き芋屋の親父のアパートの住民は皆貧乏ですが、貧乏には貧乏の強欲が。フランスに旅立とうとする貧乏画家に恋する良い人、千鶴子は、思ったより登場時間も少なくて残念でしたが、大きい目、ふっくらした頰など、相変わらずのチャーミングさ。コメディエンヌぶりが炸裂しているのが久我美子さん、『女であること』を見て苦手に感じていたのですが、社長に「オールドミスのコンコンチキ」などと今では放送不可な罵声を浴びながらも、くるくる回ってこけたり、メガネのレンズ両方割れたり、しまいには花村医師とできちゃったり大活躍。川津祐介さん演じる弟が一番わかりやすく変。分厚い本を持ち「虚無だ!」「実存主義」だと叫び、結局は食欲性欲と本能に支配されている。最後に日本国旗をもってデモ隊へ突入。若いってそういうことだ。冬のように冷たい女と言われながらクールで嫌味な性格を保ち続けた荒木道子さんも素敵。人格崩壊してからの演技が、階段を降りる仕草とか最高です。家政婦の2人も良かったし、毛生え薬を売っていながら禿げている重役3人も爆笑。しかし、この映画の主役は祖母役の東山千栄子さんだったか。焼き芋屋の親父が自分の大恋愛した男だったとか設定は荒唐無稽。途中で読んでいる本は『貧乏物語』、河上肇のは読んだことがありますが、大河内一男さんのは初見、小説でしょうか。途中から本が『ロミオとジュリエット』に。最後はきっと鳩に乗って天国へ旅立ったのだと想像します。

オープニングもメルヘンチックで、最後もピンク色でしたが、思ったよりシビアな内容でしが、焼き芋が30円だったり、30万円ゆすられたり、女性に対する発言だったり、ストやデモなど当時を感じる場面も多く楽しい映画でした。

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