生誕百年記念 映画女優・原節子『女医の診察室(1950年 監督:吉村廉)』神保町シアター


神保町シアターで開催中の「生誕百年記念 映画女優・原節子――輝きは世紀を越えて」、緊急事態宣言が発動されると映画館は確実に休館ですので1日前に駆け込みです。沢山見たい映画があったのに本当に残念。振替上映を強く望みます。本日拝見したのは『女医の診察室』、昭和のエロVシネマのようなタイトルですが、女医の常安田鶴子(つねやすたづこ)の原作、医療映画ではなく、真面目な純愛映画です。

配役
田島文子:原節子
常本かづ子:津山路子
黒川光子:風見章
根岸珠江:中北千枝子
杉山きよ:村瀬幸子
川村信吉:上原謙
川村栄子:三宅邦子

「聖ペテロ施療病院」の産婦人科部長の田島文子、そこに昔良い関係であった川村信吉が赴任してきます。原節子さんと上原謙さんのコンビは成瀬巳喜男監督の『めし』を思い出させます。2人が合った時の文子の表情が極端で、一緒にいた同僚にも、過去に何かあったことがばればれです!新吉が結婚し、子供もいるということを知り、文子は大ショック!凡婦として描かれた三宅邦子さんも十分お綺麗だと思いますが、原さんと比べられては仕方なしか。病院の皆で行くピクニックに信吉を誘う、文子の表情は湧き出る色気が抑えられない。ピクニック中の「私、誘惑しようと思ってたの」みたいなセリフに続き、はぐれた2人が抱き合うシーンは原節子のどアップ!からのお姫様抱っこ!画像も朦朧としており、これはファンタジー映画ですかっ!実年齢でも11歳差、昔はおんぶされながら信吉の背中におしっこを漏らしていたという話からも、大人の男性に対する憧れのようなものがあったのでしょうか。心臓に病気を抱えながらも激務にいどみ、さらには子宮外妊娠で危うく命を落としかけていた信吉妻の栄子を救い、完全にダウン。ホワイトクリスマスに病院の皆が「聖しこの夜」を歌う中、息を引き取ります。死に対しても「私の体を神にお返しするだけ」と言い、序盤では自分のことを不幸と言っていたのが、最後は私は幸福だったと、そしてあなたの幸福を願うだけ、と。自分の研究室に入る信吉から、銅像に刻まれたマタイ伝聖福音第十章の文言「汝等値なしに受けたれば 値なしに与へよ」のアップで映画は終わりますが、それを文子は貫いて死んだと言えます。

『原節子の真実』石井妙子著(新潮文庫)によると、原節子さんは、義兄の熊谷久虎の言うままに出演作を決めていたという見方と、原作を読み感動した原節子さんが、田島文子演じることを切望し、映画化を希望して自ら企画したという見方があるそうだが、結局真実は全くわからないということ。ただ映画としては86分と短めながらも、内容はけっこう退屈なのは真実。世の中上手く行かないものです。上映中も一瞬寝そうになりました。原節子さんが主演でなければ絶対寝てましたよ。ただ、原さんは相変わらずのお美しさで、なかなか上映機会が少ない映画を、今回拝見できたことはとてもよかったです。

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