令和2年12月文楽公演 第二部『桂川連理柵』国立劇場

令和2年12月文楽公演 第二部『桂川連理柵』国立劇場
師走の舞台鑑賞は文楽から!2019年2月にも国立劇場で公演したいた『桂川連理柵』、その時はまんまと見逃しましたので、初鑑賞です。

配役
令和2年12月文楽公演 第二部『桂川連理柵』国立劇場

今回は長右衛門とお半の逢い引き場面「石部宿屋の段」はカット、ちなみに石部は東海道五十三次51番目の宿場、現在の滋賀県湖南市です。長右衛門の妻お絹がお百度参りをしている「六角堂の段」から。短い段で若手中心で演じられます。長吉、儀兵衛という三枚目の2人と、お絹の絡みは上手く語ればもっと面白くなりそうです。お絹の肩にずうずうしく顔を乗せる儀兵衛がキモ可愛。

続く最も重要な「帯屋の段」へ。前半は竹本織太夫さん、鶴澤燕三さんのコンビ。いやはや素晴らしい。前段と比べると三味線の鳴りも違うし、織太夫さん!1人6役、3人で3役を演じるよりずっと自然で人形の動きも滑らか。至芸です。特に嫌味な鬼婆(かしらは悪婆-わるばば)おとせが絶品。婆との対比が凄い父繁斎のかしら定之進の穏やかな仏顔も良い。長右衛門の義弟、儀兵衛と洟垂れ長吉(一応設定18歳)の長い絡みは爆笑。今までで一番笑えたかも。よくも不自然な笑い方を、こんなにも自然に聞かせるものです。皆の前で言うのが恥ずかしい長吉の「女夫事」の言い方が2回とも面白過ぎ!その後もハタキと箒でやり合ってるのも笑える。最後は長吉も「出来合いの壺を被った色事師」に昇格しました。燕三さんの三味線も今日はじっくり聞かせる感じで、とても素敵。人形はそれほど活動的ではない演目なので、太夫と三味線が引っ張る舞台という印象です。

後半は豊竹藤太夫さん、鶴澤清友さんのコンビ。お絹の「私も女子の端ぢやもの…」と、一瞬だけ本心を語る長台詞。甲斐甲斐しいにも程がある。その後長右衛門がお半との宿屋での馴れ初めを全て話ますが、お絹にとっては聞くのが辛いな。長右衛門が床に入ってからお半の出、一度信濃屋の暖簾から周囲の様子を窺います。後で効果を発揮する少女らしい下駄(ぽっくり)の音も良い。ヒロインのお半の登場は少しだけなのですが、その存在感と破壊力やとんでもない。藤太夫さんのお声もお絹よりお半のがはまってる気がする。14歳の女の子に「長右衛門様、おじさん」なんて忍び寄られたら堪ったもんじゃあありません。実際の長右衛門の発音も、ちょーえみ様、みたいな感じなのも萌えます。観客にはお半が死を覚悟しているのがわかりますが、ここでも長右衛門は鈍いぞ。煙草盆に遺書を置き、帯屋の出口に下駄を脱ぎ、桂川へ行くお半。下駄はやや狙いすぎな感もありますが、もう子供ではないという強い意思表示でしょうか。繁斎の「なまいだ」の念仏と共に、緊張感が有るようで無いような特徴的な三味線のリズムに合わせて長右衛門に読ませるお半の遺書の件も良い。今回はカットの「道行朧の桂川の段」もいつか拝見したいものです。

長右衛門は38歳で、ほぼ同じ年、どうしても自分の身に置き換えて、色々妄想してしまいますが、宿屋で一緒に寝かして、なんて言われたら無理でしょう!絶対に無理!人生真っ逆さま!長右衛門は自己中で自業自得な感じもしますが、可哀想なのは若くして、お腹の中の子と共に死を選んだお半、もっと可哀想なのは努力が報われなかった妻お絹、父繁斎、ちょっと可哀想なのはお半との結婚を夢見た長吉。どんな状況でも自殺はダメ。ゼッタイ。です。

コメディとトラジディーの振れ幅が非常に大きいので、感情が付いていくのが大変ですが、ある意味上方の芸、文楽らしい演目でした。てか現代の考え方で行けば普通にR指定、というか設定ヤバいでしょう。ただ日本の伝統ですから今後も妙な改変はしていただかないように切に願います。第一部の『仮名手本忠臣蔵』も楽しみです!

コメント

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