馴染みの居酒屋の女将とシェフ絶賛の天婦羅店「みかわ是山居(ざぜんきょ)」にお伺いしました。天ぷらは親の敵にでも会ったように、揚げるそばからかぶりつくようにして食えっ!という池波正太郎先生の教えにしたがいましたので天ぷらの写真は撮影せず。
いただいたのは以下天婦羅11品。
「車海老×2、キス、墨烏賊×2、海老真薯と白魚の吸い物、バフンウニ大葉巻き、銀杏、鱈白子(菊子)、メゴチ、穴子、アスパラガス、椎茸、茄子、薩摩芋」
口直しに大活躍の大根おろしが壷にたっぷり入っているのが嬉しい。燗酒は「菊水」しかないようなので、そちらを嗜みながら。
「車海老」
うん、今まで食べた海老天の中でベスト。才巻と車の間に「巻えび」というサイズがあるのを初めて知りました。中心部はレア、プリプリで甘みが素晴らしい。頭も濃厚でうめぇな。尻尾は固すぎると感じましたが、食後にいただける『みかわ家伝書 てんぷらやの手のうち(定価300円)』の「みかわの尻尾は食べられない、食べてもいいけどうまくない」という記載に納得。
「キス、メゴチ」
キスは大振りで身がギュッとしており淡白ながらも優しい旨味が感じられます。対するメゴチは小さくても力強い歯ごたえ。美味。
「バフンウニ大葉巻き、鱈白子」
ウニの天ぷらも素晴らしい。大葉で巻くのではなく、2枚で挟み混む。数口で食べることになるのですが、食べる度にウニの旨味がガツンと来て旨い。直径5cm程はあろうかという球形に仕上げられた鱈の白子は中にトリュフ入り。白子とトリュフは合うのはわかりますが、抜群にはうまくいっていない印象。
「穴子」
まず天ぷらになる前の状態の穴子が美しい。そして大きい穴子を、早乙女親方が金属箸でザクッと良い音を立てて半分に切る、と同時に蒸気が上がる、様子が格好良いのなんの。尻尾の部分は塩、頭に近い部分は天つゆ、お勧めに従いいただきます。今までの種とは違いざっくりした衣の主張が強め、皮と身の衣の厚みを変えて調整されているそう。基本塩しか使わないのですが、天つゆも美味。ただし、付けるのはほんの少しで十分香り良し。どぼ漬けなど野暮天、食べ応えも十分で旨い。
「アスパラガス、椎茸、茄子、薩摩芋」
途中で野菜ではなく、穴子の後に野菜。5種類のうちから2種選択するのですが、欲張って唐辛子以外全ていただきました。野菜についてはあまり特徴を感じられず、銀座の「てんぷら近藤」の方が美味しい気がいたします。途中の銀杏も普通でしたし、特に皮が気になる茄子、ややパサついた薩摩芋については今一つ。
「貝柱のかき揚げ天丼」
天茶も選べるのですが、好物の天丼。よくある小海老入りでなく、小柱だけなのが素敵。小柱も大きいもの(大星)だけを使用されています。シコシコキュッキュッとした小気味好い食感が美味。塩が強めの蜆の赤出汁、漬物も良い。ここまで巨大な蜆は初めて見ましたが北海道のものだそう。
「花豆」
最後はほっくりとしたデザートで。終了まで1時間と少し、早食いにはこのスピード間も嬉しいのだ。素早く支払い(おっ、追加した野菜のお値段も思ったよりリーズナブル!)、気分良く退店いたしました。
食事以外にも靴を脱いで食事ができるのも良いし、独特の世界観を持つ内装も見事(特に粗い金属製のダクトの存在感が半端ねぇ)。もの凄くお金かかってるんだけど、決して華美ではなく、カウンター正面の淡緑の壁に描かれた柳など、とても清々しく心安らぐ店内。ある意味、何も話さなくてもこの内装が、親方の個性を雄弁に、そして静謐に物語っているよう。早乙女親方が素敵な丸いメガネをされていたのも良かったな。やはり感性が豊かな方は料理も素晴らしい。そういうことも含めて、素晴らしい種ばかりではありませんでした、不思議ととても満足感の高い天ぷらランチでした。また初夏あたりに銀宝(ぎんぽ)をいただきにお伺いしてみたい。ごちそうさまでした。
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