松竹映画100周年 “監督至上主義”の映画史『花籠の歌(1937年 監督:五所平之助)』神保町シアター

松竹映画100周年 “監督至上主義”の映画史『花籠の歌(1937年 監督:五所平之助)』神保町シアター
神保町シアターで開催中の企画「松竹映画100周年 “監督至上主義”の映画史」にて五所平之助(平之介ごしょ)監督の『花籠の歌』を鑑賞しました。

配役
父敬造:河村黎吉
娘洋子:田中絹代
小野進:佐野周二
李:徳大寺伸
堀田念海:笠智衆
娘浜子:高峰秀子
伯母お菊:岡村文子
お菊夫富太郎:谷麗光
女中おてる:出雲八重子

時間は69分と短め、昭和12年、戦時中の公開、様々な苦労があったと想像されます。オープニングはタイトルと同様の主題歌『花籠の歌』から、クレジットは花束みたいな花籠の絵、映画は、おそらく三十三間堀から銀座四丁目交差点の和光時計台、アドバルーンが浮かぶ銀座の町の風景。銀座でとんかつ屋「港屋」を営む一家、そこでは、やもめの父敬造、看板娘の洋子、揚げ物名人の李さん、女中おてるが働いています。話は洋子の結婚話を中心に進む。とんかつ屋の二階からは明治チョコレート、クラブ白粉(化粧品)、風車、流れ星のネオンが見られます。一体どこなのか、とても気になります。

小津映画のお父さん役のイメージが強い笠智衆さんが寺の跡取りで学生の堀田役!おーっ、がたいが滅茶良い、171cmだとその当時は長身の部類なのか。お顔の面影、あの特徴的な熊本訛りは全く変わらず、映画の中の緩衝役がぴったり。洋行している時に生まれたから「洋子」、横浜に到着した時に生まれたから「浜子」という名付けのエピソード通り、親父はけっこう場当たり的。20代後半の田中絹代さん(映画設定は23歳)と10代前半の高峰秀子さん(出番は少ない)姉妹のツーショットは悶絶級。兄弟夫婦役の岡村文子さん、谷麗光さんも良い味出してるー。こういう夫婦いるいる。

李くんは洋子が好きでしたが、堀田のせいで、実際は小野と相思相愛な洋子も自分が好きと勘違い。李役の徳大寺伸さんが滅茶男前で演技もグッド、後で調べてみると弟が7代目尾上梅幸だとー!途中までの自信満々な勘違いっぷりが笑えましたが、最終的には可哀想な役回り。気づくのが遅いぞ。失恋のショックで寝込んだ李くんに洋子が葛根湯的、取り敢えずこれ飲んどきゃ治る的なノリで浅田飴を食べさせるのが面白い。女中おてるは李くんが好きだったのに敢え無く失恋。李くんが店をやめた事で客足も鈍くなる。洋子と婚約した小野は仕事があまりできなそうな描写。最後は1940年に開催予定だった幻の「東京オリンピック」を当て込んで、とんかつ屋は廃業して、すき焼き店を開業するぞ!と意気込む親父たち。今年の延期になった東京オリンピック2020に沸く日本(銀座)が連想されました。歴史は繰り返す。

ここまで古い時代の映画ってなかなか上演されないので、風景とか服装とか大変興味深く拝見しました。港屋のメニューの満州汁って何?途中ででてきたあんみつ屋は「銀座若松」?しかし1つ言えるのは一説として餡蜜の発祥は「月ヶ瀬」とも言われていますが、創業は昭和12年、『花籠の歌』と同じ上映年ですが、撮影時期を考えると「銀座若松」なのかなぁ。映画の内容はそれほど面白くありませんが、若々しい俳優の皆様など、別の部分でめちゃめちゃ楽しく拝見しました。素晴らしい。

 

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