名古屋の「肉屋 雪月花」オーナーシェフの田中覚さんが、銀座六丁目「ジクロス銀座」にオープンした肉料理店「肉屋 田中」にお伺いしました。肉専門店は滅多に行かないのですが、最高峰の肉料理とはいかがなものか、興味津々でお伺いいたしました。
「松葉蟹の真薯」
鳥取県境港産、真薯との説明ですが、ほぼ蟹。下には蟹味噌。旨味は強くありませんが、柔らかな味わい。1品目に肉ではない、温かい料理は嬉しいです。
「肉海苔巻き」
本日の牛肉、舌以外は兵庫県田村畜産の田村牛(神戸牛)、43ヶ月飼育の未経産雌牛を使用。雑味など一切無く、すっと口から胃の腑へ落ちていく、極上品で驚くほど綺麗な肉の味。他の肉料理に期待が高まります。
「焼き筍」
京都山城の新物は炭火焼きで。見た目からして生でも食べられそうな柔らかさ。山菜と同様に苦味を感じられるのが特徴の初春の味覚。
「トモサンカク昆布〆の炙り」
熱した紀州産備長炭の上で直焼き。魚では見たことがありますが、肉でやられているのは初めて拝見しました。ほのかに気品漂う炭の香り、肉自体が味わい深いので、山葵と塩のみでいただきました。先日薪焼きのレストランにお伺いしましたが、上質な肉や魚に対しては圧倒的に炭に分があります。
「煮牛舌、牛蒡」
松阪牛の牛舌全体を甘い煮汁で煮込み、提供するのは舌元のみ。このような質感の牛舌は初めていただきましたので驚きました。牛舌は他に変わる物が無い部位で、多くの人に愛される理由がよくわかります。下に牛蒡が敷かれ、魚の煮付けのようなイメージでしょうか。いや〜、魚並みに柔らかい舌、凄いです。絶品。
「虎河豚白子」
続いては今年最後か、虎河豚白子、福岡県糸島のもの。
「サーロインのしゃぶしゃぶ、虎河豚白子、菜の花」
脂ノリノリなサーロインのため色味がとんでもないですが、滑らかな肉質でスッと溶けていきます。脂の旨味、残る余韻が素晴らしい。肉が良過ぎるので、白子とのマッチングは疑問ですが、おそらく胃にも優しいことでしょう。田中シェフ曰く、食後感が悪いのは脂のせいでなく餌などに使われる化学薬品が原因と思う、とのこと。これには半分納得。
「ランプの松前漬け、キャビア、酢飯」
肉に負けないよう、赤酢を使った力強い酢飯。
「酢橘冷麺」
そば粉を練りこんだ韓国の冷麺は口直し。スープは鰹節、昆布、肉出汁を使用した優しくも力強さを感じるもので、味のある美味しい冷麺との相性が良い。冷麺はかなり硬めに仕上げているのは咀嚼を促すためか。
「シャトーブリアンのステーキ」
本日のメイン。リニューアル時に取り入れた炉釜で、休ませながら丁寧に火入れをされていました。最初のコリコリしたゼラチン質の強い端部分を一口。
このレベルになると、一般的に食べているものと次元が違います。
肉ダレも提供されますが、何も付けずに、もしくは山葵と塩でいただきます。飲むように食べられる激旨シャトーブリアン。普段、自分の嗜好と価格のバランスが悪く避けている高級肉料理ですが、牛肉って高いのには理由があるからっ!という事実を絶対的に肯定させられる説得力のある旨さ。素材も重要ですが、焼きも重要で、やはり炉釜で焼く牛肉が一番旨いと思う。
「唐墨ご飯」
締めもしっかり。岐阜県飛騨の新ブランド米「銀の朏(みかづき)」の土鍋ご飯。まずは炙った唐墨を乗せて。この厚めな唐墨のカットも好感触。米は甘みは弱いが、食感が良く、パワフルで「肉屋 田中」の雰囲気と良く合っています。肉や唐墨など味の強い素材との相性は抜群。
「烏骨鶏卵黄の漬け」
続いて卵、牛しぐれ煮を乗せて牛丼風に。こんなもん旨いに決まっとるやろ!卵が美味し過ぎる。最高ですね。ちなみに漬物も肉を昆布締めした昆布が入っていたりオリジナリティあります。
「高知県産おおきみ」
1粒1粒フルーツキャップに包まれた過保護な大粒イチゴ。豊潤な香りも素晴らしい。
「善哉」
最後は煎茶と合わせた善哉、甘さ控えめで塩が効いた大人なお味でございました。
毎日毎日こんなにも素晴らしい牛肉を焼くプレッシャーはないのでしょうか、他の肉や魚と比べて圧倒的に長い時間を掛けて、人に食べられるために、人の手で育てられる牛肉という素材はやはり特別。こんなにも美味しいお肉がいただけるのは本当に有難いこと、そして江戸前寿司と違い、肉の味は値段に比例するという印象。とはいえやはり魚の方が好きなので、次はいつ来られるかわかりませんが、記憶に残るディナーとなりました。ごちそうさまでした。
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