二月大歌舞伎 第二部『於染久松色読販』『神田祭』歌舞伎座

二月大歌舞伎 第二部『於染久松色読販』『神田祭』
大好きな鮨店「さわ田」で美味しいお鮨をお腹いっぱいいただいた後、歌舞伎座「二月大歌舞伎」第二部にお伺いいたしました。先月は歌舞伎座から「さわ田」さんでしたが、その逆も良いこと甚だし。仁左衛門さんと玉三郎さん、久しぶりの2人の共演、2018年の「三月大歌舞伎」と同じ演目ですが、歌舞伎に見慣れてきたこともあり、その時よりもずっと楽しめました。素晴らしい〜。

まずは『於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)』から。お染久松と言えば、浄瑠璃作家、近松半二作の『新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)』ですが、こちらは四世鶴屋南北が、それを五代目岩井半四郎のために脚色したもの。

配役
土手のお六:坂東玉三郎(大和屋)
山家屋清兵衛:河原崎権十郎(山崎屋)
髪結亀吉:中村福之助(成駒屋)
丁稚長太:寺嶋眞秀(音羽屋)
庵崎久作:中村吉之丞(播磨屋)
丁稚久太郎:上村吉太朗(美吉屋)
油屋番頭善六:片岡千次郎(松島屋)
油屋太郎七:坂東彦三郎(音羽屋)
鬼門の喜兵衛:片岡仁左衛門(松島屋)

舞台となっている柳島妙見寺は現在も墨田区業平にある日蓮宗の寺院。嫁菜売り久作役の中村吉之丞さんが、先月に引き続き、良い味出してましたね。ほっこりです。ちなみに、河豚と餅米(おこわ)は高級食材同士で贅沢過ぎていかん!ということで、食べ合わせが悪いと言われている。そのせいか(強飯だったのにもかかわらず)仮死状態になってしまい、前髪を剃られたり、研ぎ石で頭を割られたり散々な丁稚久太郎役の上村吉太朗君も頑張ってましたね。大きな体と高い声のアンバランスが面白い。目がクリクリの寺嶋眞秀君も特製シュッシュや悪事を企てている番頭の頭にお灸を据えたり、なかなかの活躍。お灸の件は、頑張ればもう一笑いいけそうでしたね。彦三郎さん、権十郎さんなど脇を固める役者さんもとても良い。

そして土手のお六、鬼門の喜兵衛のコンビはもう安定感が凄い。こういう不安な事が多い世の中に、この安心感は堪りません。ヤッターマンのドロンジョ一味のような、ちょっと抜けてて憎めない悪党。仁左衛門さんはお顔はもちろん、いつもよりドスを効かせたお声や裾を捌いたり、髭剃りを研いだり、桶の上で胡座をかいたり、動作がいちいち格好良い!薬種問屋山家屋清兵衛の活躍で、悪事が露見していくのですが、動揺は見せません。心中を想像すると爆笑。最後は、ちゃんと2人で籠を担いで帰って行くのが本当に微笑ましいです。

二題目は清元連中による舞踏劇『神田祭』、本名題『〆能色相図(しめろやれいろのかけごえ)』の後半部分です。ちなみに鳶頭は、木遣を唄いながら山車を警護する手古舞で、芸者はその手古舞を真似て練り歩く賑やかしで、こちらも手古舞と呼ばれている。

配役
鳶頭:片岡仁左衛門(松島屋)
芸者:坂東玉三郎(大和屋)

毎度聞き取れない清元ですが、今回は予習をして行ったので何とか付いていけました。。。所作と連動しているので、詞章が理解できるほうが楽しい。舞台上には仁左衛門さんの「七つ割丸に二引」と玉三郎さんの「熨斗菱」が掲げられています。

秦の始皇の阿房宮 その全盛にあらねども 粋な心も三浦屋の 茶屋 は上総屋両助と 機転も菊の籬さえ 山谷風流あらましを 松のくらいの品定め

一歳を今日ぞ祭に当り年 警固手古舞華やかに 飾る桟敷の毛氈も 色に出にけり酒機嫌 神田ばやしも勢いよく きても見よかし花の江戸

祭に対の派手模様 牡丹寒菊裏菊の由縁もちょうど花尽し

祭のなァ 派手な若い衆が勇みに勇み 身なりを揃えて ヤレ囃せソレ囃せ 花山車手古舞警固に行列よんやさ 男伊達じゃの ヤレコラサ 達引きじゃのと言うちゃ私に困らせる 色の欲ならこっちでも 常から主の仇な気を 知っていながら女房になって見たいの欲が出て 神や仏を頼まずに 義理もへちまの皮羽織 親分さんのお世話にて 渡りもつけて これからは世間構わず 人さんの前はばからず引き寄せて 楽しむ内にまたほかへ それから闇と口癖に

森の小烏我はまた 尾羽をからすの羽さえも なぞとあいつが得手物の ここが木遣りの家の株 ヤァやんれ引け よい声かけてエンヤラサ やっと抱き締め 床の中から小夜着蒲団をなぐりかけ 何でもこっちを向かしゃんせ よういよんやな 良い仲同士の恋諍いなら 痴話と口説は何でもかんでも今夜もせ オゝ東雲の明けの鐘ゴンと鳴るので 仲直り済んました よういよんやな そよが締めかけ中網 えんやこれはあれはさのえ オゝえんやりょう

げにも上なき獅子王の 万歳千秋限りなく 牡丹は家のものにして お江戸の恵みぞ有り難き

先ほどの夫婦と同じ2人とは思えない伸びやかさ。。。芸者が鳶頭の浮気心を責める場面のツンツンという嫉妬の動作とか、親分さんに挨拶に行く場面なども面白い。急に立ち回りになりますが、手古舞は祭りを警護する役と知っていれば納得。それをきっかけに二人はすっかり仲直り、花道では何も言葉は発しませんが、周囲に「お騒がせしまして・・・さっ、茶屋でも行こか」などと言いながら、仲睦まじくいちゃつく声が聞こえてきます。こちらまでニヤニヤと幸せな気分になるお二人、こういう時代だからこそ、なおさら素晴らしく感じる一幕でした!

「三月大歌舞伎」もお二方が活躍しそうで、とても楽しみにしています。とその前に来週の第一部も楽しみにしています!

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