「書家 金澤翔子展 つきのひかり」森アーツセンターギャラリー

書家 金澤翔子展 つきのひかり
久しぶりの美術館、森ビル52階の森アーツセンターギャラリーで開催中の「書家 金澤翔子展 つきのひかり」を拝見しました。作家のことも知らずに、時間に余裕があったので、なんとなくお伺いしただけでしたが素晴らしかった!

会場はそれほど大きくありません。10歳に時に書いた「般若心経」から作品は始まりますが、下手くそで、あれっ!?大丈夫かっ!という気持ちからのスタートでしたが、続いて20歳の時に書いた「般若心経」の展示から心を完全に掴まれました。俵屋宗達筆の国宝「風神雷神図」屏風を見て書き上げられた「風神雷神」、「摩訶般若」、「一期一会」、東日本大震災の接して書かれた「希望光」、「共に生きる」、「忘れない・東北」、「春爛漫」、「大哉心乎」、「無一物中無尽蔵」。作品数は多くはありませんでしたが、感動したな〜。直島の「李禹煥美術館」で見た石の作品と似た感覚。泣いちゃったよ。単なる文字でここまで心を掴まれたのは初めて。震災などで心を痛めることはないのですが、これは刺さるな。文字から本質を感じるってこういうことか。例えば絵画だと踊る人や果物など名詞的表現の本質を捉えるということはあるのですが、書は名詞以外の形容詞的表現が直に伝わってくるのかもしれない。凄い。

この素晴らしさは、おそらく、金澤翔子さんの書く文字にゴミや汚れが付いていないから。大人になるにつれて様々な観念が身についてくるのは良いことではあるのですが、どこまでも純粋。やはり一気に気持ちで書き上げる大きい作品の方が純度は増すのではなないでしょうか。「一期一会」は一期一会でしかないし、「春爛漫」は春爛漫でしかない。どれも形などはないのですが、形、というかわかりませんが、確実にその実体を感じられる。「般若心経」「大哉心乎」「無一物中無尽蔵」などの仏語もおそらく頭ではなく心で理解しているのではないでしょうか。寺院への奉納が多いのも凄く理解できます。

「SEKAI NO OWARI」の歌詞を書いたものや、「雨」や「山」の抽象書画のような作品はあまり良いと思いませんでしたが、今後の変化が楽しみです。最後のフロアでは「六本木」「あわてんぼうのサンタクロース」「シュトーレン」などサービス精神に溢れる書に加え、幅15mの紙に力一杯書かれた「心に光を夜空に月を」、そして優しい「ありがとう」。素晴らしい展示でした。

最後の物販コーナーでは金澤翔子さんもいらっしゃり、小柄なのにびっくり。写真を撮影されたり、図録にサインされたりサービス精神旺盛な方です。作品も販売されており、自分にぴったりの言葉があれば購入しようと思ったのですが「共に生きる」「母」「楽」「自由」とか絶対違うし、「一期一会」の書は迷いましたが、やっぱりちょっとしっくり来ない。「摩訶般若」があれば良かったのにな。

森美術館で同時開催していた「アナザーエナジー展」「サンリオ展」に比べると静かな展示会、個人的には空いていてとても良かったですが、もっと多くの人が来場してもよい展示会なのでは。確実に写真などでは伝わらない作品ですから。気になったのは、作品はじっくり見ずに写真だけ撮られている方が多いこと、などなど色々違和感を感じてしまいましたが、今年最後に素晴らしい作品を拝見できて最高でした。

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