歌舞伎座で「二月大歌舞伎 第三部」を拝見しました。一本目は長唄連中による舞踏劇『鬼次拍子舞(おにじひょうしまい)』、本名題を『月顔最中名取種(つきのかおもなかのなとりぐさ)』というそうです。
配役
山樵実は長田太郎:中村芝翫(成駒屋)
白拍子実は松の前:中村雀右衛門(京屋)
例によって詞章が聞き取れず、ぼんやりしてしまいました。笛を奪い合う話。20分、短くて良かった。
二本目は落語などでもお馴染みですが、あまりかからない気がする『鼠小紋春着雛形 鼠小僧次郎吉(ねずみこもんはるぎのひながた ねずみこぞうじろきち)』です。とにかく菊之助さんが格好良かったな。
配役
稲葉幸蔵:尾上菊之助(音羽屋)
刀屋新助:坂東巳之助(大和屋)
芸者お元:坂東新悟(大和屋)
杉田娘おみつ:中村米吉(播磨屋)
蜆売り三吉:尾上丑之助(音羽屋)
石垣伴作:中村吉之丞(播磨屋)
平岡権内:尾上菊市郎(音羽屋)
左膳弟子左内:市村橘太郎(橘屋)
養母お熊:嵐橘三郎(伊丹屋)
与之助:坂東亀蔵(音羽屋)
早瀬弥十郎:坂東彦三郎(音羽屋)
本庄曾平次:河原崎権十郎(山崎屋)
大黒屋抱え松山:中村雀右衛門(京屋)
辻番与惣兵衛:中村歌六(播磨屋)
「とざいとうざい」から演目についての簡単な説明があり、本編へ。「富ヶ岡八幡の場」、人物関係がかなり複雑ですが、物語が進むうちにわかります。菊一文字を売った100両を簡単に騙し取られる刀屋新助、人良すぎ。続く「稲毛屋敷塀外辻番の場」で米吉君のおみつ登場、辻番与惣兵衛の息子、与之助にベタ惚れなのですが、わかりやすくて面白く、可憐さが堪りません。何故か辻番の前で置いておかれる籠、菊之助さん登場、格好良い〜。そこにたまたま新助とお元が通りかかり、百両は返せないので、死ぬしかないという話をしている。新悟君の澄んだお声はやはり美し過ぎる。鼠小僧に変身して稲毛屋に忍び込みすぐさま100両をゲットする次郎吉、生着替えシーンも格好良いし、バレないように真面目に次郎吉として演技しているのが笑いを誘う。実は父である与惣兵衛との殺せ殺さないのやりとりも、どちらも真剣ではありますが、ちょっとコミカル。
「稲葉幸蔵家の場」、易者平澤左膳として生活している稲葉幸蔵こと鼠小僧次郎吉。最初に新助から100両をゆすり取った一味の婆は次郎吉の育ての母なのか。そして米吉おみつを遊郭に売ろうと誘拐している、おみつ無事助け出されてよかった。左内につれられて米吉君、さようなら。その後急にやってきた次郎吉の恋人で鳥目の松山が登場、雀右衛門さんおくどきも良いですが、その後、目が見えるようになって戻ってきたのは何故だ。明るくなったから?丑之助君は独特な大人っぽい話し方が面白い。わざとやってんだとしたら才能を感じる。橘三郎さん演じる悪婆お熊も化粧が凄いし非道ぶりがなかなか良い。
「奉行所白洲の場」では彦三郎さんの早瀬弥十郎が格好良いが、特に悪を裁くとかはせず、次郎吉の発言をそのまま信じただけか。与惣兵衛泣き過ぎ。最後の「同裏手水門の場」での立ち回りもスピーディで素敵。とにかく菊之助さんが格好良くて、今まで拝見した中では一番格好良かったかも。
冷静に見るとツッコミ所満載、現代劇なら炎上してそうな理不尽演目でしたが、これをちゃんと成立させているのは歌舞伎の世界でしょうか。役者の方々も、それぞれを淡々と演じているのが良かったな。来月の歌舞伎公演も楽しみにしています!
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