落語『あいとあいまい raw_live PERFORMANCES 林家つる子「紺屋高尾」』渋谷パルコ

渋谷パルコ地下1階のギャラリーイベントで落語を拝見しました。総客数30人に未たない小さい会場で特別感あり。

林家つる子「高尾から描く〜紺屋高尾」
昨年6月の「銀座檸檬落語会」以来の拝見。4月1日に真打昇進も決定しおめでとうございます。つる子さんが積極的に取り組んでいるという古典落語を女性の視点から描いた演目、今年の2月から積極的に演じられているようですが、素晴らしかった〜。オタクの成功物語という超ざっくりな説明でしたが、高尾が一介の職人である久蔵をあっけないく受け入れてしまうのに疑問を感じるというのは、やはり女性らしい視点なのでしょうか。

高尾と同期の「たまき」なる遊女が登場しますが、この人物の造形がとにかく素晴らしい。ちょっと桃井かおりさんっぽい雰囲気で、前半から明るい女性のように演じられていますが、そこに精神的な脆さ、ヤバさを感じさせる。ネタおろし2ヶ月ほどでこの完成度は、もしやご自身がモデルなのかと勘繰ってしまいます。そこに13歳のスミ、遣手のおかあさんが奥行きを添える。花魁道中で久蔵が昏倒する場面は『籠釣瓶花街酔醒』で次郎左衛門が八つ橋に出会う場面を想像、「三枚起請」の喜瀬川、「子別れ」のお島、『鬼滅の刃』の蕨姫の特別出演も楽しい。

1時間の大ネタなのですが、様々な登場人物の感情の起伏がジェットコースターのようで、こちらが付いていけない。いきなり太鼓持の一八が登場する場面は、悲しみの中に完全に置いていかれたな。。。この構成、演じるほうもどうかしている。高尾からの視点ということで、やはり男性より女性の心により強く刺さるのでしょう。演者も泣いてるし、客席も泣いていて、空気が震えている。つる子さんの新作落語と言ってもよい演目ですが、ご自身の力量の加え、古典落語がベースとなっているため、物語に芯と厚みがしっかりあるのも素晴らしい。落語を聞いた後のこんな気持ちは初めてで、一応ハッピーエンドではあるのだけれど、たまきの死の悲しみが残る。例えば、幸田文の『流れる』を読み終わった後の気持ちのような。。。是非、梅も桜も花開く、もう1つのエンディングも作って欲しい。しかしながら素敵な何かの誕生に立ち会えたような、手に汗を握る感動がありました。28日の「桂文珍 大東京独演会 vol.15」のゲスト出演も楽しみにしております!

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