歌舞伎座で「團菊祭五月大歌舞伎 昼の部」を拝見しました。1本目はお馴染み『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』です。
配役
工藤左衛門祐経:中村梅玉(高砂屋)
曽我五郎時致:尾上松也(音羽屋)
曽我十郎祐成:尾上右近(音羽屋)
小林朝比奈: 坂東巳之助(大和屋)
化粧坂少将:坂東新悟(大和屋)
八幡三郎:中村莟玉(高砂屋)
梶原平次景高:中村吉之丞(播磨屋)
近江小藤太:中村亀鶴(八幡屋)
梶原平三景時:大谷桂三(十字屋)
鬼王新左衛門:大谷友右衛門(明石屋)
大磯の虎:中村魁春(加賀屋)
若い役者中心のフレッシュな舞台、莟玉君は最近女方より立役の方が良い気がする。新悟君は清楚でお綺麗、化粧映えも良い、魁春さんは俎帯が重そう、魅力でもあるぎくしゃくした動きが顕在化。。。右近の十郎はやや凛々し過ぎる気がしますが動作は美しい、松也君は相変わらず動きがぽってりしておりキレ無し、勢いに体が付いていっていない感じ。梅玉さんの高座に上がる前の、空気が変わるような「いずれも高座ごめんくださりましょう」が頗る良かったなぁ。歌舞伎らしい頻繁に上演される演目が故に演じるのが難しい気がする『寿曽我対面』です。
二本目は、十二世市川團十郎十年祭『若き日の信長』。何回見ても「おさらぎ」が出てこない大佛次郎が十一世市川團十郎のために書き下ろした、桶狭間の戦い前夜までの話、昭和27(1952)年に初演された作品だそう。
配役
織田上総之介信長:市川團十郎(成田屋)
木下藤吉郎:市川右團次(高島屋)
弥生:中村児太郎(成駒屋)
五郎右衛門:市川男女蔵(滝野屋)
甚左衛門:大谷廣松(明石屋)
監物:市川九團次(高島屋)
林美作守:片岡市蔵(松嶋屋)
僧覚円:市川齊入(高島屋)
林佐渡守:市村家橘(橘屋)
平手中務政秀:中村梅玉(高砂屋)
三幕四部構成なのですが、全幕暗め、唯一、舞台がパッとしたのは一幕目の子供と柿を貪る場面くらいか。季節外れの柿、本物なのね。二幕目は、一幕目最後から陰気続きの信長のお守り役、平手政秀が信長の態度を戒めるために自害するのですが、声が聞こえにくい。メインの立役に声が通る方が1人もおらず、眠気が。物語をはしょっているのか弥生など人物の造形も伝わりにくい。もっと明るい演目にすればよかったのに。。。
三本目は、眞秀君の初舞台『音菊眞秀若武者(おとにきくまことのわかむしゃ)岩見重太郎狒々退治』です。
配役
岩見重太郎:尾上眞秀(音羽屋)
弓矢八幡:尾上菊五郎(音羽屋)
長坂趙範:尾上松緑(音羽屋)
藤波御前:尾上菊之助(音羽屋)
大伴家茂:市川團十郎(成田屋)
渋谿監物:坂東彦三郎(音羽屋)
趙範手下鷹造:坂東亀蔵(音羽屋)
腰元梅野:中村梅枝(萬屋)
村の若い者萬兵衛:中村萬太郎(萬屋)
同光作:坂東巳之助(大和屋)
同佑蔵:尾上右近(音羽屋)
重臣布勢掃部:市川團蔵(三河屋)
局高岡:中村時蔵(萬屋)
重臣二上将監:坂東楽善(音羽屋)
うって変わってとにかく賑やかで華やか。中村芝のぶさんも出演されており嬉しい。皆で眞秀君を盛り立てようという心意気が素敵。初めて知りましたが眞秀って「まさひで」ではなく「まほろ」って読むのね、そして12歳くらいかと思っていたらまだ10歳なのか、とても堂々としていて2〜3歳は大きく見える。演目の内容自体も訳あって女の子にやつした子供武士が悪者を倒すわかりやすいもの。子役には『毛抜』などより、こういうすっきりスカッとした演目が似合う。菊之助さん、團十郎さんとの3人舞は新鮮!!長唄、常磐津、義太夫、所作、動物、神様など全部盛り込んでいるのも、こういう舞台では好感がもてる。真っ白な大狒々が現実に存在したら本当怖いですが、菊五郎八幡の力で見事退散。菊五郎さんの今後の芸道にも通づる台詞は重みがありました。体の動きはややぎこちないですが海老反りは魅せた。そして台詞の独特のイントネーションが気になりますが、お顔も10歳にしては凛々し過ぎで今後が楽しみです。
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