9月の歌舞伎初めは「九月大歌舞伎 第一部」から。あまり興味が無い部でしたが、詳細を知って、だんだん興味が湧いてきて楽しみ。しかし第二部に出演予定だった歌昇君、中村君を含む舞台関係者5名が新型コロナウイルス感染症「陽性」で第二部休演は衝撃。不安になりますが、第一部を楽しみます。
まず一幕目は『お江戸みやげ』から。芝翫さんが珍しく女形で初役を勤め、脇を中村屋兄弟が固める面白そうな川口松太郎作の新作歌舞伎。
配役
お辻:中村芝翫(成駒屋)
おゆう:中村勘九郎(中村屋)
阪東栄紫:中村七之助(中村屋)
角兵衛獅子兄:中村福之助(成駒屋)
角兵衛獅子弟:中村歌之助(成駒屋)
小女みの:中村玉太郎(加賀屋)
女中お長:中村梅花(京扇屋)
お紺:中村莟玉(高砂屋)
鳶頭六三郎:中村松江(加賀屋)
常磐津文字福:中村福助(成駒屋)
常磐津文字辰:中村東蔵(加賀屋)
まずは湯島天神「茶屋松ヶ枝の場」から。幕が引かれると中央に福助さん、おっ〜、何か神々しい。呂律が怪しかったですが、台詞も思ったより多くて、最後は角兵衛獅子兄弟の付き添いでしっかり歩いてお帰りになりました。役者の阪東栄紫とお紺は恋人なのですが、養母の常磐津文字辰は金にがめつく、お紺を金持ちの妾にしようとしている。七之助さんと莟玉君カップルは全く違和感無しでお似合い、文句の付けようも無し。お紺の「私死んじゃうよ」はキラーフレーズですね。そして主役は茨城結城から紬を売りに来たお金大好きお辻とお酒大好きおゆうの2人、2人も亭主に先立たれたという境遇もあり仲良しのよう。本当は17歳差ですが、役としては1歳差。しかもおゆうが年上って言ってたっけ。設定としては30歳中頃でしょうか。茨城弁はあれで性格なのか?面白いからいいけど。
ついついお酒を飲むと気が緩んでしまうおゆう、宮地芝居(下級役者による興行)を見て、栄紫にベタ惚れ。「湯島松ヶ枝座敷」で合うことに。襖を開けると布団が敷かれていたり、もしかしたら栄紫とおゆうが!と思わせる演出が楽しい。二人が手を握り合い、これから!という所でお紺と文字辰が乱入。結婚したいなら20両出せと迫り、それお見かねたおゆうは頑張って稼いだ13両3分2朱を、文字通り投げ出します。その金をさっさと回収し去っていく文字辰、いつもは良婆が多い気がする東蔵さん、頬っぺたに「悪党」と書いてある悪婆役も良い感じ。最後は「湯島天神境内の場」で、しんみりと、幕。文字福に対する「お元気な姿を拝見して・・・」、おゆうに対する「お酒を飲み過ぎないでね」、角兵衛獅子兄弟に対する「親孝行するんだよ」など現実とリンクした台詞も楽しい。勘九郎さんの演技は笑えるのですが、抑える所は抑えて欲しいかも。個人的には親切そうに見えてちゃっかりしている女中お長役の梅花さんが良かったな。そしてお綺麗な市川紋吉役は誰だったのでしょう?(後に中村芝のぶさんが濃厚接触者のため休演、代役の中村梅乃さんと判明しました)
二幕目は『須磨の写絵(すまのうつしえ)行平名残の巻』、清元による舞踏劇なのですが、こちらも思いがけなく良かった!
配役
在原行平:中村梅玉(高砂屋)
海女村雨:中村児太郎(成駒屋)
海女松風:中村魁春(加賀屋)
上手に清元連中、浅葱幕が落ちると華やかなお三方、辺鄙な海辺の須磨ですが、皆さん衣装が豪華!不自然ですが、これぞ歌舞伎、今年6月に能『松風』を拝見していたので、松風村雨の気持ちが沁みました。こういうお役の梅玉さんは、やっぱり清潔感と色気が混じった素敵さ。2人とも都人の行平大好き、詞章と舞が連動しており、わかりやすい。児太郎君が魁春さんに合わせにいってる感じ、所作では45歳の年齢差は大きいな。行平を巡って喧嘩していますのですが、すぐに仲直り、舞の表現が楽しい。罪が許され都に帰ることになった行平は姉妹には何も告げずに、烏帽子、狩衣、短冊を残して立ち去ります。行平身勝手!と思ってしまいますが、いたしかたなし。きっと迎えに来ると言いますが、それが叶わないことは2人もわかっていて、行平も辛い。最後は思いの残して花道から退場。「たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む」
来週は第三部、仁左衛門さんと玉三郎さんの『東海道四谷怪談』、超楽しみです!
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