八月納涼歌舞伎 第一部『裸道中』『大江山酒呑童子』歌舞伎座

八月納涼歌舞伎 第一部『裸道中』『大江山酒呑童子』
歌舞伎座で「八月納涼歌舞伎 第一部」を拝見しました。一本目は次郎長外伝『裸道中(はだかどうちゅう)』、新国劇で上演されていた演目で、歌舞伎では初上演だそう。

配役
博徒緒川の勝五郎:中村獅童(萬屋)
勝五郎女房みき:中村七之助(中村屋)
大政:市川男女蔵(瀧野屋)
小政:中村橋之助(成駒屋)
法印大五郎:中村虎之介(成駒屋)
保下田の久六:中村吉之丞(播磨屋)
豚松:市村光(橘屋)
次郎長女房お蝶:市川高麗蔵(高麗屋)
清水の次郎長:坂東彌十郎(大和屋)

第二部の『新門辰五郎』では全くパッとしなかった獅童さんですが、歌舞伎らしくない演目の爆発力が凄く、とても笑える多い演目。幕開け、薄布団にくるまる可愛らしいおみきから掴みは盤石。落語的な雰囲気が香るのも楽しい。喧嘩するほど仲が良いの見本、お互いの愛情が時に垣間見え、怒鳴りながらもこっそり合掌する姿が可愛く、次郎長の為に奮闘するも空回り、逆に次郎長に気を遣わせる様も憎めない。床を踏み割る勝五郎、勝五郎が博打に負けてワナワナするおみき、勝五郎とおみきの所作が何となく似ているのも素敵に感じる。次郎長たちの着物を質入れした金を元手に博打に勝つと豪語し暗転、明るくなると褌一丁の勝五郎が立っているのは爆笑。空気が読めない大五郎役の虎之助君もチャーミング。臭い茶ってどんなの?もちろん次郎長役の彌十郎さん初め、一行のキャラクターも立っており、バラバラなように見え、しっかり団結している。男女蔵さんの汗はフェイクでしょうが、勝五郎の汗は本物なのか。ちなみに勝五郎が時に叫んでいた「ちんけいとう」、頭では「珍鶏頭」と変換されたのですが、本当は確実に放送禁止用語な「珍毛唐」。役者が楽しそうで、見ていて幸せを感じる舞台、いつか浪曲でも拝聴してみたいものです。

二本目は能『大江山』を基に 萩原雪夫が十七世中村勘三郎に書き下ろし、昭和38(1963)年に初演された舞踏劇『大江山酒呑童子(おおえやましゅてんどうじ)』です。

配役
酒呑童子:中村勘九郎(中村屋)
平井保昌:松本幸四郎(高麗屋)
渡辺綱:坂東巳之助(大和屋)
酒田公時:中村橋之助(成駒屋)
碓井貞光:中村虎之介(成駒屋)
卜部季武:市川染五郎(高麗屋)
濯ぎ女わらび:中村児太郎(成駒屋)
濯ぎ女なでしこ:坂東新悟(大和屋)
濯ぎ女若狭:中村七之助(中村屋)
源頼光:中村扇雀(成駒屋)

扇雀さんの頼光が涼やかで素敵、虎之助君も先ほどの大五郎と同一人物とは思えぬほど清々しい。酒呑童子のすっぽんからの出、最初の上を見上げた莞爾で2階3階席はヤられていまうのでは。酒呑童子が手に持っているのは鬼あざみ、猩々を思わせる子供らしい可愛らしさ。中村屋のための演目だけありニンはばっちり。酒呑童子の酔舞、鬼神となってからの激しい所作も、長唄連中との連携が抜群で、所作と囃子のリズムが終始ぶれないのが凄過ぎる!頼光、洗濯女3人(実は姫1名)の舞もありますが、勘九郎さんが頭抜けている印象。大盃から酒を飲む場面でもチラッと見せる鬼の顔にゾックり、足踏みの力強さもとても良い。戦っている最中にも酒を飲んでしまうほど酒好き、同じ日本酒好きとしては共感を抱かずにはいられません。人をさらったりはしていますが、もともと住処だった比叡山も追い出されている訳だし、同情も感じる。確かに悪い鬼のはずですが、これほど成敗されてしまうのが可哀想と思える鬼も珍しい。最後はよろよろ、断末魔の「ゔぁ〜」も哀愁が最高。第二部、第三部が消化不良だっただけに、素晴らしい第一部でした。

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