生誕110年記念 映画監督・中村登―女性讃歌の映画たち 『河口(1961年 監督:中村登)』 神保町シアター

河口(1961年 監督:中村登)
久しぶりの神保町シアター「生誕110年記念 映画監督・中村登―女性讃歌の映画たち」で岡田茉莉子さん主演映画『河口』を拝見。併設の神保町よしもと漫劇場ではM-1グランプリの予選が行われています。

出演者
白川李枝:岡田茉莉子
館林吾郎:山村聰
司梶太:田村高廣
角井清一郎:東野英治郎
三崎洋一:杉浦直樹
宮原大三:滝沢修
新藤かね子:町田祥子
武田潔:川金正直
坂口みつ:水上令子
松村屋のお内儀:沢村貞子

映画は沼津駅から。白川李枝の男性遍歴の話。暗い話かと思いきや、コメディかと思いきや、やっぱり暗い不思議な映画。個人的には岡田茉莉子さんと銀座の街並みを楽しめるだけで最高なのですが、パリ画廊(岡半の看板が見えるのでパリ画廊の位置は銀座7丁目の並木通り沿いか)を支える美術商の館林演じる山村聰が素晴らしい。今まで出演作は沢山見ているはずなのに、意識したのは初めて。美術と人間に関する鑑識眼は間違いなく、雇い主の李枝に犬のように従順。疲れ果て、ティーカップにどぶどぶ注がれる琥珀色の酒、脱ぎ捨てられたハイヒールを這いつくばってそろえる館林の姿は、純粋さが際立ち泣けてくる。時折ぶちきれる様がちょっとゲイっぽい、というか李枝に全く興味を示さないのは、やはりゲイなのか。「あー、いやだっ!」の2連発は爆笑。男性陣で唯一、館林の下心なく本当に店主の李枝を思う気持ちに涙腺が緩みます。李枝と館林が一緒になればいいのに。

そして製薬会社の社長、角井を演じる東野英治郎さんも良いが、1シーンしか登場しない松村屋の内儀役の沢村貞子さんの嫌らしい目線が最高。一瞬ですが、あの爬虫類のような目はなかなか出来ない。関西人らしい、がさつさとねちっこさを見せる角井、銀座の洋食屋「イーストサイド」で三崎と鉢合わせた後の、数寄屋橋公園付近で喧嘩するシーンは頗る楽しい。声の調節スイッチいかれてるのね。そして三崎が最初に提示した金額は30万円、確かに絶妙で、李枝が笑ってしまいそうになるのも納得。李枝の覚醒を感じたか、1千万以上のゴッホの作品など欲しい絵を全部買う気まんまん、目がいっちゃってる館林から続く最後の河口のシーンは単純に考えれば、川から広い海に出ようとしている、画廊の経営者として生きていこうとしている李枝の心の描写なのでしょうか。岡田茉莉子さんのアップシーンも多く、顔の演技やその当時最先端と思われるファッションを堪能できる素敵な映画でした。

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