若尾文子映画祭『刺青(1966年 監督:増村保造)』角川シネマ有楽町

若尾文子映画祭『刺青』
先日、東劇で「シラノ・ド・ベルジュラック」を拝見した際、「若尾文子映画祭」のチラシを発見。なんとビックカメラ有楽町の上に角川シネマという映画館があり、そこで上演されている!歌舞伎公演が全て中止になりましたので、早速お伺いしました。最初に拝見したのが、今回一番の目玉となっている『刺青』の4Kデジタル修復版、世界初披露だそう。増村監督の作品は初見です。

配役
お艶:若尾文子
新助:長谷川明男
刺青師清吉:山本学
旗本芹沢:佐藤慶
船宿権次:須賀不二男
芸者屋徳兵衛:内田朝雄

導入部が素晴らしい!それまでの説明一切無しで、紐で縛られたお艶が刺青師清吉に麻酔薬で眠らされ、さらに着物を脱がされます。清吉が肌を撫でるシーンがあるのですが、名前の通り大変に艶やか。いきなり強姦!?と思いきや、刺青開始、チャチャチャチャという小気味好い彫り針の音の中、右下に「刺青」のタイトル、構図が良いです。「うっ、んっ」と苦しみの声を上げながら眠る若尾文子さんがマゾヒズム的感覚で大変に、エロいです!!完成後痛みに悶える姿もエロい!そして背中の動きに合わせ蠢く蜘蛛が恐ろしい!小さい時の思い出のため女郎蜘蛛は苦手です。この時の実際の若尾さんの実年齢は33歳と、奉公人と駆け落ちするにゃーちと歳を取りすぎていますが、それを補って余りある色気が満ちる。刺青が映えるしっかりとした背中も素晴らしい。現代にこんな役を演じられる女優はいないでしょう。

そのあと、何でこの状況になったかの説明へ。しかし芸者になる前から何でこんなに擦れっ枯らしで、怠惰で、偉そうで口が悪いのか。成るべくして芸者に成ったとしか思えません。駆け落ちした2人は、頼った権次に騙され、新どんは殺されかけ、お艶は深川の芸者屋徳兵衛に売り飛ばされてしまい、堅気に戻れないように刺青を入れさせた訳で。。。ちなみに実家を逃げ出す際のお艶の着物は『伊達娘恋緋鹿子』のお七、『妹背山婦女庭訓』のお三輪などと同じ、浅葱色と赤の麻の葉文様段染めですね(すでに着方が堅気でないが)。徳兵衛が染吉(お艶の芸名)に見せた、木にもたれた(一体化した?)女の足元に大量の男性の屍体が転がっている掛け軸は『肥料』という題名らしい。本来の性格+魔性を秘めた女郎蜘蛛の刺青で、あっという間にNo.1芸者にのし上がった染吉。地盤ができた後は、戻ってきた新助も利用し、権次に復讐。新どんは両親への思いやりもあり、いい奴なんだが、意志が弱く流される。100両欲しさにできる男前の旗本芹沢を、徳兵衛と一緒に騙そうとして、失敗するだろうなぁ、失敗するだろうなぁと見ているものに思わさせ、やっぱり失敗した時の「サンピン野郎!徳兵衛やっちまいな!」の気っ風に爆笑!徳兵衛は返り討ちにあった挙句、新助に木の棒で滅多打ちにされ死亡。。。

新助に「あたしが貢ぐから不自由はさせない」と言っておきながら、最終的には新助を裏切り、できる男前で金持ちの旗本芹沢の妾になる決めた染吉。新助に包丁で殺されかけますが、逆に刺し殺します。新どん、けっこう強かったのに何故!?ラストは殺人の場面になるたびに、どこからか現れ、一部始終を目撃していた刺青師清吉に「女郎蜘蛛は生かしちゃおけねぇ」ということで背中から刺されて染吉も死亡。清吉も切腹し、三人が折り重なり、背中の女郎蜘蛛からドクドクと妙に赤い血が流れる場面で終了寂滅為楽。

最初のインパクトが凄くて期待が高まったのですが、話の内容としては尻窄み。刺青師の人物描写が浅いためか、全部、女郎蜘蛛のせいにすんなよ!という突っ込みは避けられませんでした。脂が乗った色気全開の若尾文子さんを見るための映画ではないでしょうか。物語としては色々気になる所や、小道具、衣装系が雑に感じる部分はあるものの、当時の映画はパワーが凄い。そんなに予算も無い(と想像される)なか良い映画を撮ろうという気合いが伝わります。婀娜やかで強い若尾文子さん、素敵でした!
若尾文子映画祭

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