国立演芸場で「第五回 瀧川鯉昇・鯉八 不思議な親子会」を拝見しました。
「沈黙対談コーナー」瀧川鯉昇・鯉八
幕が上がると座付の2人、何故か斜め上をずっと気にしている師匠はこの頃、幕が気になるお年頃らしい。国立劇場の幕は厚くて、会場の声もショットアウトするため心が安らぐそう。浅草のエアコンは17度に設定するとやる気を無くす、26度くらいが丁度良いのは人間と同じ。客席の椅子の幅は45cm以上だと肘の取り合いが無くなる。一門だはないのに何故か2年連続前座を勤める辰ぢろ君は、実は隠し子ではという話から、東南アジアで10人に1人は師匠と同じ顔がいるという。ギョロ目と厚い唇のせいかな。石神井川、水辺で両手で扇いで脇を冷やすのが一番体に優しく涼しいという話など、何を言っても笑える癒しの空気感。
前座「道灌」入船亭辰ぢろ
「最後の夏」瀧川鯉八
中学校からの同級生である三遊亭小笑さんの話、実家が魚屋の鯉八さんと養豚場の小笑さん、お互いに物々交換をしていたそうですが、最近衝撃の事実が!少笑一家は刺身が嫌いで豚の餌にしていたそう。優しいから言えなかったのね。爆笑。さらに静岡のスーパー銭湯の親子会、師匠がへっつい幽霊を演じたが爆睡してしまった話などマクラ長め。落語は甲子園地方大会の決勝で決定的エラーをしてしまった吉田君が監督に優しく執拗に責められる話。登場事物が監督しかおらず、上下を使い分ける落語の楽しみの1つを取り去っているのが新鮮。吉田君の未来が懸念されます。下げは「(飼い犬に)だからウンコ喰うなって」「そんな夏の午後」
「船徳」瀧川鯉昇
わざと穴の空いた靴下を履いて人の家に行き、優しさに付け込み新しい靴下を手に入れていたという師匠らしいマクラ、まさか鯉八さんの半襟も穴が空いていたとは。。。船徳は設定がちょっと違い、唐茄子屋政談っぽい入り。羽織を綺麗に畳んで懐に入れる客、手拭いを片手で格好良く巻こうとする若旦那の描写などほぼ全ての擽りがチャーミングで楽しく、岸壁に在原業平や五右衛門の辞世の句が沢山貼ってあるのも良い。途中で脱線し、毎年、落語会で訪れる「久留女木の棚田」で有名な浜松市北区引佐町、大河ドラマ『井伊直虎』の撮影に棚田が使われた時、エキストラの方全員が鯉昇師匠の手ぬぐいを被っていたという、爆笑。結局予定より20分押しの、全く熱の感じられない熱演。櫂と櫓の使い方もリアルで想像力が膨らむ。今までで聞いた中で最高の「船徳」でした。下げは「質屋のせがれ!?客まで流した」
「にきび」瀧川鯉八
春風亭昇々と熊本に二人会に行ったら客が全員90歳オーバー、唯一できる古典落語「牛ほめ」で爆笑をさらったマクラが楽しい(しかも2連続で)、そこから何故か薬物の境界線の話になり、怖い新作落語へ。登場人物は中学生のマー坊とお婆ちゃんの2人。にきびを育て、潰す快感を息子に必死に説くババァが怖く、マー坊の「ばあちゃん!」の言い方は癖になる。最後のにきびに集中させる描写はリアルにやった方が面白い気が。にきび富士ってどんなだろう。下げは「にきびにそんな力はない」
「蛇含草」瀧川鯉昇
倒産した電機会社からもらった首が回らないい扇風機、バスでぶっかき氷をもらった暑さに我慢できない奥様、実はその氷は・・・というちょっと怖いマクラから。白眼を剥く氷の食べ方に爆笑ですが、餅のフリとは流石です。落語は一本目が長かったため、蛇含草部分を端折り、餅を喰う部分に集中、性格の捻れた男の描写がうま過ぎるし、コツコッツンと鳴るヒビ割れた形見の風鈴の描写が面白い。餅の食べ方は、出世は鯉の滝登り、お染久松夫婦喰い。特に厚い唇を駆使した滝登りの餅の食べ方が秀逸!!下げは「吐く(履く)ものは、ここにもあります」、鯉昇師匠、最高!!
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