落語「柳家権太楼 独演会」深川江戸資料館 小劇場

19時開始の落語会の前に1時間ほど空きがあったので、どっかで一杯(酒orコーヒー)やろうと思い、たまたま寄らせていただいたのが清澄白河駅近くの「梅仁(うめじん)」という昔ながらの居酒屋。外に貼ってあった名物「蓮根饅頭」なるものに惹かれたのですが、入店してびっくり!神亀、小笹屋竹鶴、大地、丹沢山、京の春など日本酒パラダイス!「酒は純米 燗ならなおよし」と上原浩氏の標語もばっちり掲げられていました。鍛えられた嗅覚はなかなかのもんだと自負。料理も本わさび漬け(神亀の酒粕使用!)、アジフライ、蓮根饅頭、サバ味噌といただいたのですが、どれも旨い。お酒は「羽前白梅」「神亀」を1合ずつお燗でいただいたが、燗付けも良かった。素晴らしい。

親方に話を聞いてみると神亀酒造の先代の小川原社長(専務)と親交があったということで、燗付けの上手さも納得。年始には神亀の樽酒も販売するらしく、うわー買いたい!が、常連でないので言わずにおく。値段はやや高めだが、良い素材を使用しているので、納得できる。ただ、この昔風の設えに、人によってはややぶっきらぼう(私全然平気)と感じる今風でないサービスでは−口コミサイトを見ると−なかなか厳しいのかもしれない。受ける側の味覚とコミュニケーション能力の退化を感じずにはいられませんでした。2020年3月にまた「柳家権太楼 独演会」があるので絶対来よう。う〜ん、偶然素敵なお店にも出会えて良い日だ。でもってほろ酔い気分で落語会へ。

開口一番:三遊亭歌つを「子ほめ」
好きな演目、丁寧でちゃんとポイントポイントで笑わせてくれる。最後の子供を褒めようとして失敗する畳み掛けが良いです。下げは「1歳とはお若く見える、どう見ても半分でございましょう」

柳家さん光「初天神」
権太楼師匠の6番弟子だそう。初めて聞く方、初めて聞く演目。坊主頭で可愛らしいキャラクター。大人びて小憎たらしい子供の演技が上手。飴屋の売り物の飴を「舐めくり回した」手で摘んだり、蜜を舐めた団子をまた蜜壺に入れたり、なかなかお下品な父と比べると、子供は上品と言えなくもないか。お祭りの様子がイメージできて楽しいが、完全に上方落語なので、関西弁でないとやや違和感がある。そこを感じさせないパワーがあるとなお良いかも。

柳家権太楼「試し酒」
初めて聞いた演目、昭和初期にできた新作落語ということですが、いや〜、久々に笑い泣き。丁度美味しいお酒を飲んだ後ということもあり激はまり。涙が止まらない一幕で、会場も大盛り上がり。

枕は秋の落語の演目ってあんまりないんですよというもの。一番有名な「目黒のさんま」は三遊亭系の話らしい。確かに金馬師匠(三代目)のものは秀逸。「らくだ」はフグなので、冬と思いきや夏という興味深い話も。調べてみると江戸時代には、フグは解毒作用があると信じられていた夏野菜と一緒に食していたという話があるらしい。さらに夏は貝毒が発生しやすくフグの毒が強くなるという噂も。真実はいかに!

尾張屋の主人の家に近江屋の主人が下男の久蔵と共にやってきます。久蔵が酒が強く五升は飲めるというので、本当に飲めるかどうか久蔵をタネにした主人2人の賭けが始まるというシンプルな話。丹波国大江山の酒呑童子の親戚(嘘でした)という「久蔵」の朴訥で竹を割ったようなキャラが最高!野が見尽くせない(飲み尽くせないの掛詞)ほど広い武蔵野の絵が描かれた一升杯に注がれた美酒を「ウッウッゥウッウッ」と一息に飲み尽くす久蔵、このキャラに一度はまってしまったら、もう何を言っても面白くなる。師匠が左向くと顔の輪郭がナスビっぽくって(映画『夜は短し歩けよ乙女 監督:湯浅政明』の樋口師匠みたい!)愛嬌が超絶素敵でズルい!「お酒飲む人 花ならつぼみ 今日もさけさけ 明日もさけさけ」「相撲負けても 下駄さえ履けば カッタカッタと 音がする」など酒に関係無い都々逸までも披露し、意外な博識ぶり。五升目は落語と知っていながら手に汗握る。五升飲みきった後には客席から盛大な拍手となり一体感が素晴らしい。流石です!下げは「表の酒屋で五升飲んできただよ」。いやはや凄かった!

柳家権太楼「死神」
「居残り佐平次」をやろうと思ってたが、これは鎌倉の独演会でやるので、今日は「死神」ってことに!うほっ、楽しみ!権太楼師匠の話にアドリブはほとんどなく台本通り(奥様が書き下ろす)というのも興味深い。3〜5年かけて仕上げるそうです。立川志の輔さんの死神はよく聞いているのですが、内容も少し違って面白い。呪文は「アジャラカモクレン キューライソ アサダ二世ハ手ヲ抜いた テケレッツノパー」、何故に超マニアックなアサダ二世!しかもそこそこ受けてるし!お客さんも凄いわ。薬に人参を出したらぴょんぴょん跳ね回るほど元気になった、医者の大宮終点に「先は無い」と言われた、長い蝋燭は三遊亭金馬のっていうくすぐりも笑える。銭が無いのは、首が無いのと同じよ!という女の台詞が強烈。

金に目が眩み一計を案じる場で消された死神は男を救った死神自身(死神は同じ顔なので見分けが付かないらしい)、おかげで常任理事を解任されちゃったみたい。死神の演技は重みがありますが、最後の蝋燭の火を移す場面での「震えると消えるよ・・・」の連発(ドロドロの音響付き)は特に迫力満点でぞくぞく。下げは定番の失敗して男が死ぬもの。酔いも冷める素晴らしい死神でございました。歌舞伎、日本酒、落語と好きなもの三昧の、いやはや本当に素晴らしい1日でした。

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