壽 初春大歌舞伎 第一部『當辰歳歌舞伎賑』『荒川十太夫』『狐狸狐狸ばなし』歌舞伎座

壽 初春大歌舞伎 第一部『當辰歳歌舞伎賑』『荒川十太夫』『狐狸狐狸ばなし』
歌舞伎座で「壽 初春大歌舞伎 第一部」を拝見。1本目は『當辰歳歌舞伎賑(あたるたつどしかぶきのにぎわい)』です。

〈五人三番叟〉
三番叟:中村福之助(成駒屋)
三番叟:中村鷹之資(天王寺屋)
三番叟:中村歌之助(成駒屋)
三番叟:中村玉太郎(加賀屋)
三番叟:中村虎之介(成駒屋)

〈英獅子〉
芸者:中村雀右衛門(京屋)
鳶頭:中村鴈治郎(成駒屋)
鳶頭:中村又五郎(播磨屋)

5人は多い、誰を見たらいいやらわからないが、ぶつからないのに感心。5人のキビキビとした動きと、勢いのある足踏みが心地よい。鷹之資君の動きは当然、ジャンプ力も凄い。セリの上げ下げで変わって、ベテラン3人により落ち着いた所作、芸者に尻尾を掴まれて動けない獅子が可愛い。

2本目は2022年「芸術祭十月大歌舞伎」初演、素晴らしかった講談ベースの新作歌舞伎『荒川十太夫(あらかわじゅうだゆう)』です。

配役
荒川十太夫:尾上松緑(音羽屋)
松平隠岐守定直:坂東亀蔵(音羽屋)
大石主税:尾上左近(音羽屋)
杉田五左衛門:中村吉之丞(播磨屋)
泉岳寺和尚長恩:市川猿弥(澤瀉屋)
堀部安兵衛:市川中車(澤瀉屋)

配役はほぼ同じ、演出は少し違うが何が違うかはわからない。。。スポットライトとかあったっけ。もう泉岳寺で杉田に怒られる序盤から、十太夫の心持ちを想像して、うるっときてしまう。前回は3階東側から見ており、最後の花道を颯爽と去る場面で涙腺決壊でしたが、今回は亀蔵さんが良過ぎた。中車さんの演技で感情が抑え込まれかけましたが、その後の心の広く温かい松平定直と十太夫のやり取りに涙腺決壊です。猿弥さんの和尚も変わらず深く、優しい。悪い人が誰も登場しない、心が洗われる舞台です。

3本目は『江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし(こりこりばなし)』、1961年初演、北條秀司作の喜劇だそう。

配役
手拭い屋伊之助:松本幸四郎(高麗屋)
女房おきわ:尾上右近(音羽屋)
雇人又市:市川染五郎(高麗屋)
博奕打ち福造:大谷廣太郎(明石屋)
おそめ:中村青虎(澤瀉屋)
弔問の女おしづ:中村梅花(京扇屋)
遊び帰りの男:澤村宗之助(紀伊国屋)
寺男甚平:中村亀鶴(八幡屋)
法印重善:中村錦之助(萬屋)

伊之助が元上方の女方役者という設定が良く、序盤はおきわと法印の下世話なやり取りが笑える。錦之助さんの法院はハマり役、そして珍しい染五郎君の与太郎的な三枚目役も新鮮で楽しく、青虎さんの牛娘は、周囲からのあまりの言われようが、可哀想にも思えましたが、なかなかの迫力と存在感。60年前の作品なので、現代との道徳ギャップは多々感じられますが、それも歌舞伎か。フグ鍋、天冠を頭に付けた地蔵、全員でガタガタと震える動きの不自然さ、水を得た魚のように生き生きとした幸四郎さん、染五郎君のジャンピング正座、惚けた後のおきわの可愛さ。「えぇ玩具が手に入ったわ」にはゾッとしましたが、「金毘羅船々」で終わる余韻も素敵です。

とても面白い第一部でしたが、ちょっと寂しい客入り。携帯機器の音はもちろん、ビニールのガサガサ、ほぼ全員がわかっていたとしてもオチを言うのはやめて欲しい。
壽 初春大歌舞伎 第一部『當辰歳歌舞伎賑』『荒川十太夫』『狐狸狐狸ばなし』

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