七月大歌舞伎 昼の部『菊宴月白浪 忠臣蔵後日譚』歌舞伎座

七月大歌舞伎 昼の部『菊宴月白浪』歌舞伎座
歌舞伎座で通し狂言『菊宴月白浪(きくのえんつきのしらなみ)忠臣蔵後日譚』を拝見、32年ぶりの上演とのこと。配役や地名も忠臣蔵と同じ、もしくは似た名前が多い。五段目で死亡した斧定九郎が何故生きているのか不思議に思いますが、単純に赤穂事件の1年後を描いた創作と考えれば納得です。

配役
斧定九郎:市川中車(澤瀉屋)
金笄のおかる:中村壱太郎(成駒屋)
塩谷縫之助:中村種之助(播磨屋)
腰元浮橋:市川男寅(滝野屋)
角兵衛獅子猪之松:市村竹松(橘屋)
毛利小源太:中村福之助(成駒屋)
丁稚伊吾:中村玉太郎(加賀屋)
下部与五郎:中村歌之助(成駒屋)
高野師泰:市川青虎(澤瀉屋)
山名次郎左衛門:澤村由次郎(紀伊国屋)
世話人寿作:市川寿猿(澤瀉屋)
一文字屋お六:市川笑三郎(澤瀉屋)
加古川:市川笑也(澤瀉屋)
仏権兵衛:市川猿弥(澤瀉屋)
斧九郎兵衛:浅野和之
石堂数馬之助:市川門之助(滝野屋)

まずは人形による口上から、お声は團子君、浮橋と禅覚寺の影でいちゃいちゃしている隙に、大事な「花筐の短刀」を盗まれる塩谷判官の弟、縫之助の間抜けっぷりに愕然。斧定九郎の父九郎兵衛がぶら下げている蛸は「七段目」、実はフリだというのも同じなのか。塩谷判官のオマージュよろしく切腹すると見せかけて、高野師泰をぶった切る斧定九郎。九郎兵衛が「待てっ」と言うのは畳が汚れるから、重りに大根を四隅に置いたり悪ふざけが凄い。蜂の巣に隠された「こふさきの忍びの一巻」を授かり暁星五郎に覚醒。その後の九郎兵衛の切腹場面は急に重くなる。「山名館表門の場」はセットが師直の屋敷に似ている。急に北村大膳が登場するのは何故。上から落ちてくる雪の量にびっくりです。

二幕目は「浅草新鳥越借家の場」、ここからの展開が面白い、まさか与五郎が高野家の落胤だったとは。高野家再興を決意してからの与五郎改メ直助、もはや別人かという歌之助君の変化がとても良い。良い役任されてるなぁ。続く「三囲堤の場」は完全にふざけている。南北先生が楽しんで書いていたのが伝わる。斧定九郎の「50両」ときて、実は兄弟だった浮橋と権兵衛の七段目。殺しの場面ですが、わかる人は笑えてしまうのが歌舞伎の凄さ。猿弥さんの権兵衛の役所が情緒不安定かつ難解。高野家の関係者ですが、実は定九郎の双子の兄ということが判明。そして父が死んで憔悴しているおかるにプロポーズしてしまう情緒が理解不能。流石は鶴屋南北。「小名木川隠家の場」では与五郎に殺されて終了かと思っていた笑也さんが嬉しい再登場。両国の花火と鉄砲、ちょい役の角兵衛獅子は義太夫と合わせて五段目、「二つ玉や〜」の洒落がうまい、花火を背景にしたふわふわ、東側3階席だったためほとんどお顔が見えなかったのが残念。

三幕目の「本所石原町石屋の場」は、与五郎まで石屋で働いており急展開かつ展開が早い、その後は外連味たっぷり、凧の宙乗り、帰りを楽しみにしていたら、東側の席からは背中しか見えないのね。。。与五郎の攻撃により凧から落ちそうになる場面では客席から悲鳴も。「専蔵寺大屋根」では、海で水を掛け合うカップルのような瓦の投げ合いが楽しいが、瓦の効果音は少し気になります。そして何故か突然に壁を蹴破って登場するおかるが格好良い。

歌之助君への期待度が高いし、それにしっかり答えている感じ、登場場面が多いので、後半ちょっとだれた気がしましたが、最近の成長が素晴らしい。天に向かう足の親指も素敵。中車さんは頑張ってはいますが、映像役者と舞台役者の違いか、花道を歩く姿からして様になっていないのはどうしようもない。今後の慣れもあるのでしょうか。澤瀉屋、応援しております。

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