「奥の細道330年 芭蕉」出光美術館

「奥の細道330年 芭蕉」出光美術館

時間が空いたので終了間近の展覧会に行って参りました。俳句や詩は好きなのですが、それほどグッときた記憶がない「松尾芭蕉」です。作品を見ているといきなりわからない重要語句が登場。ほぼ全部の作品に「発句」と記載されていますが「発句」とは??そもそも江戸時代は連歌形跡が主流で「発句(最初の句 五・七・五)」「脇(発句の次の句 七・七)」「挙句(最後の句)」で歌われる。発句を独立させた「俳句」という言葉は明治時代に正岡子規が定着させました。そして和歌は雅、俳諧は俗、こっけい味を必要とするという。とっても勉強になりますね。印象に残った作品も色々ありました。

『発句短冊「ふる池や」』芭蕉で最も有名な句「古池や 蛙飛びこむ 水の音」、何故有名かと言うと、それまでは清流の歌姫とも呼ばれる河鹿蛙の美しい鳴き声を句に入れ込んでいたものを、別の次元で取り込んだということで当時とても斬新だったからというのは有名な話です。

『発句懐紙「やまさとは」』「山里は 万歳遅し 梅の花」、句というよりも掛け軸のバランスが素晴らしい。懐紙の右に随分寄せられて書かれており、軸の左側には懐紙に少しかぶるように刺繍の梅の花、堅苦しくなく良いです。

『発句自画賛「蓑虫の」』「蓑虫の 音を聞きにこよ 草の庵」、自分の家へ遊びに来てと友達を誘った句、「こよ」が一段で書かれて強調されています。蓑虫は秋風が吹くと父を慕って泣くという。芭蕉はきっと皆んなに好かれる変な人(褒め言葉)だったのでしょう。人柄が滲み出る作品。

『発句自画賛「はまぐりの」』「蛤の 生けるかひあれ 年の暮」おめでたい蛤を読んだ句。蛤が3つ愛らしく描かれています。「貝」と「生き甲斐」が掛詞になっており、前向きな気持ちを感じさせるのが良い。

『書状 杉風宛』杉山杉風(さんぷう)に当てた手紙の中の句「夕顔に かんぴょうむいて 遊びけり」、鮨好きには見逃せない句です。干瓢は夕顔からできており、栃木県でほとんどが生産されています。夕方にお手伝いしながらも夕顔を剥いて遊ぶ子供たちの姿が浮かんできます。

『西行物語絵巻 第四巻/詞書 烏丸光廣、画 俵屋宗達』、「風になびく 富士のけふりの 空にきえて ゆくえもしらぬ わが思いかな」は芭蕉も大きな影響を受けたという西行の句、雄大な富士山との対比、無常感が出ていて素晴らしいです。ビビッドな絵も可愛い。

『菊画賛/仙厓』「此花を きくとはいへど 耳はなし はははありとても くひのみもせず」、出光美術館で何度も見ていますが、ユーモアたっぷりで何度見ても微笑ましい一句です。菊と聞く、葉と歯が掛詞。はなもありますが。続く「池あらば 飛びて芭蕉に 聞かせたい」という蛙の気持ちを読んだ『芭蕉蛙画賛』も素敵。

与謝蕪村の作品も何点かあり、山水画のピリッとしたイメージでしたが、可愛い人物画ばかり。『盆踊り画賛』「にしきぎの 門をめくりて 踊りかな」夜半亭(二世、一世は早野巴人)、「門をめくる」という表現がとても好き。

気楽にお伺いしましたが、行けば色々と発見のある美術館。出光は好みの展覧会が多く、いつもそれほど混み合っていないので好きな美術館、陶片の常設展も良いです。皇居を見ながら無料のお茶がいただけるサービスも素晴らしいですね。

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