『世阿弥最後の花』藤沢周著 河出書房新社

『世阿弥最後の花』藤沢周著 河出書房新社
ラジオ「オードリーのオールナイトニッポン」で若林さんが話されていて知った本、『ブエノスアイレス午前零時』で第119回芥川賞を受賞した藤沢周さんの本は初めて読みましたが、よくもお能、しかも72歳で佐渡に流刑になった後の世阿弥というマニアックな題材に取り組んだものです。売れないだろうな〜と感じますが、お能好きには大変嬉しいです。

佐渡に流刑されてからの世阿弥については詳細不明なので、ほぼフィクション。舞の描写も多いので、お能を見たことがある方が確実に楽しめる内容です。メインはお能を通した父と子の物語、語り手は世阿弥、息子の元雅、了隠(溝口朔之進)と変わります。たつ丸、観世座笛方六左衛門、了隠の成長も楽しい。雨乞い能の場面では今年3月に拝見した日本博皇居外苑での観世清和さんの『翁』がオーバーラップ。最後は『西行桜』か!とテンション上がりましたが『黒木』の演能場面がクライマックスでした。ちなみに世阿弥の配所となっていた正法寺は、和泉村城主本間家の菩提寺として1324年に建立、寺宝として伝わる「神事面べしみ(雨乞いの面)」は、世阿弥が雨乞いの舞に着用したという。国立能楽堂で蝋燭の灯りによるお能は何度か拝見していますが、「正法寺」で今も毎年6月に行われているという蝋燭能、是非見てみたいですね。素敵な小説をありがとうございます。

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