歌舞伎座で「十月大歌舞伎 第三部」を拝見しました。まずは『松竹梅湯島掛額(しょうちくばいゆしまのかけがく)』から。『其往昔恋江戸染(そのむかしこいのえどぞめ)」と『松竹梅雪曙(しょうちくばいゆきのあけぼの)』を合わせた演目、『伊達娘恋緋鹿子』で有名なお七吉三物の1つです。
配役
紅屋長兵衛:尾上菊五郎(音羽屋)
八百屋お七:尾上右近(音羽屋)
小姓吉三郎:中村隼人(萬屋)
丁稚長太:寺嶋眞秀(音羽屋)
下女お杉:中村梅花(京扇屋)
長沼六郎:片岡亀蔵(松島屋)
釜屋武兵衛:河原崎権十郎(山崎屋)
月和上人:市川團蔵(三河屋)
母おたけ:中村魁春(加賀屋)
「吉祥院お土砂の場」、おっ、町娘4人の中のおかつ役は中村芝のぶさん、出演されていると嬉しくなります。鎌倉時代の話で、紅長とお七は幼馴染みなのか。役者の年齢差(50歳!)から近所の叔父さん的な人かと思った。歩き方とか、どう見ても若者には見えないですが、この幕はとにかく菊五郎さんが可愛い。眞秀君より全然可愛いぞ。「うっそー、そりゃおどろきだわい!」、確信的な棒読み具合に爆笑。閃いた時に膝を手で打つ仕草も面白い。お七と吉三郎にチューをさせる件とかかなり下世話、そんな事言っちゃあ身も蓋もないですよ。そして亡者のコスプレもストラップにしたいくらい素敵です。
左甚五郎が彫ったという吉祥院の天女に瓜二つのお七、入れ替わっても誰も気付きません。梯子で欄間に登るのは、火の見櫓のフリでしょうか。そして流れにちょっと違和感のある了念の米尽くし、雪若丸美味しいですよね。最後の御土砂でぐにゃぐにゃになるのは今年1月で国立劇場で拝見した『四天王御江戸鏑』とほぼ同じ流れ。歌舞伎座の女性スタッフが登場したり、最後は菊五郎さんが幕を引くのも同じ。めかくし鬼、ナイルのカレー、オリンピックのピクトグラム(見ていないので元がわからない‥)、など解りやすい笑いがいっぱい(一部滑っている)、物語の内容がわからなくても問題無し。
おそらく色々出来事があるのでしょうか全部飛ばして一幕目と全く違う雪の舞台、厳格な雰囲気漂う「四ツ木戸火の見櫓の場」、「恋の旅路はひとすじに」から浄瑠璃『伊達娘恋緋鹿子』に乗せて。しかし梅花さんはおばちゃんにしか見えないのが凄いな。お七の優しい「おじさん」4連発は後の激しさへの対比として良い。「降りしきる〜」から人形振りへ。足遣い役の方もちゃんと下手に控えていらっしゃるのね。文楽では人形を人間らしく演じるのですが、逆に人間が人形を人形っぽさを残しながら人間らしく演じるという難しさ。文楽では絶対見られない魂が抜ける描写、アクロバットな場面は面白いですが、人形振りはやり過ぎでは。身体能力が高過ぎるのか、ロボットダンスみたい。。。激し過ぎて髪飾りも飛んでっちゃったよ。衣装もお七のお馴染みの赤と浅葱色の麻の葉段鹿の子振袖に変わり、梯子から落ちて人間に戻ります。吉三郎が探していた「天国の短刀」も見つかり、花道から吉三郎の下へ急ぐお七、どうかお咎めがありませんように。
2本目は六歌仙容彩『喜撰(きせん)』、清元と長唄による舞踏劇です。2018年の「團菊祭五月大歌舞伎」の菊之助さん喜撰で拝見していますが、記憶無し。。。
配役
喜撰法師:中村芝翫(成駒屋)
所化:片岡亀蔵(松島屋)
同:中村松江(加賀屋)
同:坂東亀蔵(音羽屋)
同:市村竹松(橘屋)
同:中村玉太郎(加賀屋)
同:市村橘太郎(橘屋)
同:中村吉之丞(播磨屋)
祇園のお梶:片岡孝太郎(松島屋)
キ/我が庵は 芝居のたつみ常盤町 しかも浮世を離れ里
世辞で丸めて 浮気でこねて 小町桜の眺めに飽かぬ 彼奴にうっかり 眉毛を読まれ
ナ/ほうしほうしはきつつきの 素見ぞめきで帰らりょか
わしはひょうたん 浮く身じゃけれど
キ/ぬしは鯰の取り所 ぬらりくらりと今日もまた 浮かれ浮かれて来りけるナ/もしやと御簾を余所ながら 喜撰の花香 茶の給仕
キ/浪立つ胸を押しなでて 締まりなけれど鉢巻も 幾度しめて水馴れ棹
ナ/濡れてみたさに手を取って 小野の夕立 縁の時雨
キ/化粧の窓の手を組んで どう見直して胴ぶるいナ/今日の御見の初昔 悪性と聞いてこの胸が 朧の月や松の影
キ/わたしゃお前の政所 いつか果報も一森と 誉められたさの身の願い
ナ/惚れすぎる程愚痴な気に キ/心の底を知れ兼ねて ナ/じれったいでは キ/ないかいな
なぜ惚れさせたコレ姉え ナ/自惚れすぎた悪洒落なキ/賤ケ伏屋に糸取るよりも 主の心が それそれとりにくい
ええさりとは 機嫌気褸も普段から
酔うたお客の扱いは 見馴れ聞馴れ目顔で悟る
粋を通したその後はコレひぞり言粋といわれて浮いた同志
ナ/ヤレ色の世界に出家を遂げる ヤレヤレヤレヤレこまかにちょぼくれ
キ/愚僧が住家は京の辰巳の 世を宇治山とや人は言うなり
ちゃちゃくちゃ茶園の話す濃茶の縁の橋姫
ゆうべの口説の 袖の移り香 花橘の小島ヶ崎より
一散走りに走って戻れば うちの嬶あが悋気の角文字
牛もよだれを流るる川瀬の うちへ戻って我から焦がる 蛍を集め手管の学問
ナ/唐も大和も里の恋路か 山伏流しの水に照りそう 朝日のお山
誰でも彼でも二世の契りは 平等院とや さりとはこれは うるせいこんだにキ/帰命頂礼どら如来 ナ/衆生手だての歌念仏
キ/釈迦牟尼仏の床急ぎ 抱いて涅槃の長枕 睦言代わりのお経文
ナ/なまいだなまいだなんまいだ なぜに届かぬ我が思い ほんにさ ここに極まる楽しさよ
最後は所化たちの住吉踊りなどで賑やかに終了。芝翫さんに舞踏が上手というイメージはありませんが、祇園のお梶をすぐに口説いちゃう喜撰法師のキャラは芝翫さんと合っていて面白い。
右近君の人形振りの変わり具合を見に、もう1回行きたい気もしますが、時間が無さそう。。。「どうか体が二つほしい、ものだわい」、来月の第一部も楽しみにしております!
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