銀座八丁目、並木通りと見番通りの間にある出世街道と呼ばれる極細道にある鮨店。時代を辿ると長い歴史のあるお店ですが、現在の銀座の「小笹寿し」は1995年創業。ちなみに今や伝説となっている鮨職人岡田周三が腕を振るっていた「小笹寿し」は1950年頃の創業で、1982年に閉店しているそうです。そんな歴史を感じるお店のムードとねじり鉢巻がトレードマークの寺島親方のお人柄が好きで、たまにお伺いしています。
本日いただいたのは以下16貫、巻物1本分です。自分の「お好み」でいただけるのも嬉しいです。
「平目、鯛、キス、カワハギ、カワハギ皮、小肌×2、赤身漬け、アジ、鰹、カスゴ、縁側炙り、カワハギ、穴子、ひもきゅう、干瓢巻き」
米酢のシャリはかなり柔らかめで、米の食感はあまり感じられず口の中で溶けるようです。いくつか小笹寿しのスペシャリテと思っているタネがあります。
「カワハギ」
そもそも無性にお伺いしたくなったのは、近所の居酒屋で「刺身 かわはぎ」と書かれた看板を見たため。その四文字を見た瞬間、小笹寿しのカワハギが脳裏に浮かび、寝ても覚めても消えてくれなくなりました。小笹寿しでは年中食べられるのですが、秋冬が旬です。肝と紅葉おろしを乗せてポン酢で、旨々っ。念願叶い幸せです。肝が無いとなんのこっちゃわからないといくらいの魚ですから、肝は本当重要です。
「カワハギ皮の炙り」
カワハギの握りは他の鮨屋でもたまに出会いますが、この皮の握りはここのみ。炙りのテクニックは天才的。香ばしい香りとモチっとした食感が最高。
「小肌」
小肌は1回頼むと必ず2貫、普通のと朧乗せです。当時は酸っぱいものが苦手で小肌の酢〆なんて無理〜だったのですが、初めて小笹寿しの小肌を食べた時の衝撃は忘れられません。ふっくらとした身と優しく心地よい酢〆のバランスが素晴らしい。もう少しするともっと美味しくなりそう。
「アジ」
鯵好き人間にはこの大きさは堪らん。タネは大きくて食べ応えがあるのも好き。
「平目縁側の炙り」
軽く炙るところはあるかもしれませんが、このスナック感は真似できないのでは。脂が多い部分であるため非常に難しいと思われます。絶品!
「穴子」
濃厚に仕上げた穴子も絶妙。流行りのトロトロタイプも良いですが、これはこれで最高。ちなみに直焼きした「雉焼き」がスペシャリテですが、これを握りにしてもらうことも可能です。
「干瓢巻き」
最後は甘めにこっくりと仕上げられた干瓢で。見た目はあんまり綺麗ではないかもしれませんが、それで良いんです。胃に入れば同じなどと暴力的なことではなく、これもまた江戸前鮨。
今日はまさかの貸切状態だったので、寺島親方と−主に親方が趣味の山登り−お話をしながら、とても楽しくお鮨をいただきました。70歳以上だと富士山本宮浅間大社奥宮で記帳できるのですが、見事達成され、ガイドも見たことがないという絶景をご覧になったお話や、マンションの階段を8kgの荷を背負って往復トレーニングされているお話など興味深く拝聴いたしました。鮨の話なんてしないです。何卒お体をお大事にされ、末長く美味しいお鮨をお握り下さることをお願い申し上げます!豪快な握りと温かく懐の深い寺島親方は、迫力のある演技と優しい笑顔が魅力の坂東彌十郎さんを連想させます。ごちそうさまでした。
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