歌舞伎座で「錦秋十月大歌舞伎 昼の部」を拝見しました。1本目は菊之助さんが初役で俊寛を勤める『平家女護島 俊寛』です。
配役
俊寛僧都:尾上菊之助(音羽屋)
丹波少将成経:中村萬太郎(萬屋)
海女千鳥:上村吉太朗(美吉屋)
平判官康頼:中村吉之丞(播磨屋)
瀬尾太郎兼康:中村又五郎(播磨屋)
丹左衛門尉基康:中村歌六(播磨屋)
色んな俊寛を見ましたが、こんなに綺麗で冷酷そうな俊寛は初めて。爺さんのイメージがありますが、現代の年齢と単純比較できないものの、この頃の年齢は30歳代。見た目が綺麗なだけに、この状況はなかなかに哀れさを感じます。他2人比べて俊寛だけやたら足も汚れている。吉太朗君の千鳥はちょっと喋り方が耳に障り、動きもちょっとギクシャクな感じか。又五郎さん、歌六さんのベテランは流石に良い。妻の東屋が死んだと知った時の絶望感からの流れは説得力があり、最後の場面も悲痛。今後がとても楽しみな菊之助さんの『俊寛』でした。
2本目は『音菊曽我彩(おとにきくそがのいろどり)稚児姿出世始話』です。
配役
曽我一万:尾上右近(音羽屋)
曽我箱王:尾上眞秀(音羽屋)
小林朝比奈:坂東巳之助(大和屋)
秦野四郎:中村橋之助(成駒屋)
化粧坂少将:尾上左近(音羽屋)
鬼王新左衛門:中村芝翫(成駒屋)
大磯の虎:中村魁春(加賀屋)
工藤左衛門祐経:尾上菊五郎(音羽屋)
内容と出演者のためか『寿曽我対面』よりも気軽な雰囲気、長唄の詞章も聞き取りやすい。先日の「第八回 研の會」は参加できませんでしたが、右近君と眞秀君のコンビも息がぴったり。下半身は動いていないながらも久々に菊五郎さんの舞も拝見できて有り難い。
3本目は『権三と助十(ごんざとすけじゅう)神田橋本町裏長屋』です。
配役
権三:中村獅童(萬屋)
助十:尾上松緑(音羽屋)
助八:坂東亀蔵(音羽屋)
権三女房おかん:中村時蔵(萬屋)
小間物屋彦三郎:尾上左近(音羽屋)
願人坊主雲哲:中村橘太郎(橘屋)
願人坊主願哲:中村國矢(紀伊国屋)
左官屋勘太郎:中村吉之丞(播磨屋)
猿廻し与助:中村松江(加賀屋)
石子伴作:河原崎権十郎(山崎屋)
小間物屋彦兵衛:中村東蔵(加賀屋)
家主六郎兵衛:中村歌六(播磨屋)
大岡越前守が舞台には出てこない大岡政談。謎解き自体は驚くものではなく、演者たちが賑やかに、わいわい楽しそうにしているのを、こちらも楽しむ演目か。あまり見られないコミカルな演技の松緑さんがなかなかチャーミング、全く身近ではない井戸替えの風景、出演者が非常に多いのも楽しい。時蔵さんの着こなしによる色気が何気に凄まじく、中村國矢さんがハゲ鬘とメイクではごまかせない男前ぶり。与助さんの猿が可愛かったので、殺されてしまった時は胸が詰まり、吉之丞さんが少しだけ嫌いになった。古典、舞踏、新作という構成も良い昼の部、来週の夜の部も楽しみです。
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