第二部に続いて、第一部も拝見しました。お客様の入りも、前回と比べれば上々です。3等が定席なのですが、今日は再開後初の2等席、2階一列目正面で拝見しました。やっぱり舞台との距離が近くて見やすい!一題目は『ひらかな盛衰記 源太勘当』「梶原館の場」から。
配役:
梶原源太景季:中村梅玉(高砂屋)
腰元千鳥:中村扇雀(成駒家)
局錦木:中村歌女之丞(成駒家)
梶原平次景高:松本幸四郎(高麗屋)
茶道珍斎:中村かなめ(成駒家)
横須賀軍内:中村梅蔵(高砂屋)
母延寿:中村魁春(加賀屋)
国立劇場らしい古典的な歌舞伎らしい演目です。源太の弟の平次役は松本幸四郎さん、性格が胴欲でマザコン、三枚目な雰囲気がよく出ていました。良くも悪くも目立ってます。源太、千鳥は実際には20歳前半と役者さんとの実年齢とのギャップが凄いですが、そこまで気にならないのは歌舞伎ならでは(ちょっとは気になります)。振袖姿の扇雀さん、平次に反抗しまくって、勝気でおきゃんな性格がよく出ていました。「ビビビビ」もきまりましたね!軍内役の中村梅蔵さん、小柄でぷっくりした見た目がお役にぴったり、台詞回しと小慣れてくると、おちゃらけ坊主珍斎との掛け合いも、もっと面白くなりそう。悪党3人の手締め「ヨヨヨイ・・・」の後に何故か拍手が。そして「関東一の風流男」、梶原源太役の中村梅玉さんが花道から登場。一ノ谷の戦いで箙に梅の花の枝を挿して戦ったという逸話から、頭に紅白の梅を刺した烏帽子に桃と紫の衣装、一般的に無骨と言われる坂東武者には珍しい嫋やかな出で立ちです。衣装の大3つの「三つ大文字」という紋は大庭氏との関係によるものらしいですが、詳細不明。その後、源太が佐々木高綱との宇治川の先陣争いの様子を語りますが、気分は暗い。そして後ろで手紙を読む母の様子はもっと暗い。さらに「いろは笑い」はいつか実際に使ってみたい。
いつもの余裕たっぷり軽妙な梅玉さんも素敵でしたが、今回一番好きだったのは、中村魁春さんの延寿。源太の刀を手に持ち、平次に語っていると見せて、源太を励ます姿、最後の吹き消した手燭を後ろ手で持ち、背中を向けた立ち姿が美しい。女性も背中で語るのか。しっとりとした味わい深い一幕でした。
二題目は新作歌舞伎『幸希芝居遊(さちねがうしばいごっこ)』です。
配役
久松小四郎:松本幸四郎(高麗屋)
金沢五平次:大谷廣太郎(明石屋)
二朱判吉兵衛:中村莟玉(高砂屋)
三国彦作:澤村宗之助(紀伊國屋)
坊主小兵衛:松本幸一郎(高麗屋)
松本幸四郎さんにしか出来ないであろうサービス精神に溢れた笑いがいっぱいの演目でした!四の五の言わずに楽しい!歌舞伎好きだと1.5倍楽しい!!役名の久松小四郎は初世松本幸四郎の改名前の名前だそう。他の役名も実際江戸時代に活躍した歌舞伎役者から。色んな演目を合わせた吹寄ごった煮。『伽羅先代萩 床下』の鼠から登場した子役の松本幸一郎君も演技が上手くてめっちゃ良かった。続いて猪から登場したのは莟玉君、小柄なので猪にぴったり嵌る。『紅葉狩』の更科姫の舞も素敵でした。『玉兎』、『粟餅』、おとぎ話のようにメルヘンな小人の『大森彦七』から幸四郎さんの独断場、5人とも凄い楽しそうに演技されていて、この芝居の趣向にもばっちり。『盛綱陣屋』の間違った心理描写は爆笑、そりゃ幸一郎君もニヤついちゃいます。小道具の使い方も最高。『四谷怪談』、ほくろ使いが見事な『河内山』から『引窓』の濡髪長五郎、『高坏』、『棒縛』、『勧進帳』の弁慶からの『色彩間苅豆 かさね』の連理引き、楽し過ぎる!さらに5人のコンビネーションがダンスのような五つの面を使った早変わり、『仮名手本忠臣蔵』の斧定九郎、与市兵衛、『三人吉三』のお嬢吉三、『恋飛脚大和往来 封印切』の忠兵衛の夢のコラボ。幸四郎さんの芸達者振りは凄い。最後は常磐津『三人形』の乗せ歌舞伎の始祖とも言われる名古屋山三の舞で幕。この状況ならではの演目ですので、上演されるのは最初で最後かも。必見です!
秋はナスが美味しい季節、10個くらいは余裕で食べれちゃいますが、現実世界では問題ナスです。そして来月は中村吉右衛門さん、片岡仁左衛門さん登場!!とてもとても楽しみにしています。
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