「三月大歌舞伎」第一部を拝見しました。まずは江戸歌舞伎の始まりを感じられるお目出度い演目『猿若江戸の初櫓』から。
配役
猿若:中村勘九郎(中村屋)
出雲の阿国:中村七之助(中村屋)
若衆:澤村宗之助(紀伊国屋)
若衆:市川男寅(瀧野屋)
若衆:中村虎之介(成駒家)
若衆:片岡千之助(松島屋)
若衆:中村玉太郎(加賀屋)
若衆:中村鶴松(中村屋)
福富屋女房ふく:市川高麗蔵(高麗屋)
福富屋万兵衛:坂東彌十郎(大和屋)
奉行板倉勝重:中村扇雀(成駒家)
歴史によれば1624年に、猿若勘三郎(初代中村勘三郎)が江戸の中橋に猿若座(後に中村座)を創設したのが、江戸歌舞伎の始まりという。8年後に移転していますが、理由が江戸城に近過ぎるからというのが面白い。花道から猿若、出雲の阿国の2人が登場、舞台背景には江戸城と富士山が描かれており、日本橋付近と思われるが、実際の角度的にはもう少し北の上野、浅草辺りでしょうか。色々あって奉行板倉役の中村扇雀さんが良かったな〜。舞台上の空気がより和やかになりますし、あの落ち着きと上品さは素晴らしい。若衆6人もピチピチで可愛らしい。若衆歌舞伎が禁止されたのも納得。最後の勘九郎さんの猿若舞が楽しいです。頭巾を被った道化風の衣装で、朱色の紐を使った珍しい舞。猿若の滑稽さと出雲の阿国の美しさの対比も良いです。
続いても所作事、『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』、こちらも楽しい演目です。
配役
浪花の次郎作:尾上松緑(音羽屋)
禿たより:中村莟玉(高砂屋)
吾妻の与四郎:片岡愛之助(松島屋)
産地としては浪花が愛之助さんで、吾妻が松緑さんな気もしますが、配役としては絶妙ですね。江戸と難波のお国自慢から始まり、二人で一服、五枚銀杏は愛之助さん(松島屋)の定紋、三つ銀杏は高麗屋の定紋なのね。「籠に乗せてきた振袖は誰だ?」と聞く与四郎に対し、「島原の傾城、小車太夫の禿だから、島原の様子を聞いてみよう」と答える次郎作。
四ツ手駕籠をめくると、そこには禿のたよりちゃん、男二人のむさい雰囲気がパッと和らぎます。今後の課題ともなるのでしょうが、莟玉君は花魁よりも可愛らしい禿が良くお似合い。じゃあ俺からと、息杖を刀に見立て、「以上(意味は何?)」と背に染め抜かれた羽織を着て大阪新町遊郭での様子を語ります。相方が必要ですが、禿では無理と言われてからの「お〜辛気」は大人びており可愛い。島原の様子を語る禿たよりに続いて江戸の様子を語る与四郎ですが、ふぐ汁は鉄砲(下級)女郎の意味だったり、際どい詞章。再び次郎作の語りに戻り、与四郎も加わり、遊女とのいざこざに。羽織を屏風に、羽織紐を三味線に見立てたりと楽しいクライマックス。
最後は連判状と千鳥の香炉から、真柴久吉、石川五右衛門と互いに認識しますが、禿たよりが何とか静止し、幕切れ。第三部の『楼門五三桐』との繋がりも感じさせるのも素敵です。そんな訳で第三部も楽しみにしています!
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